メリーバッドエンド

□自慢の恋人達。
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「えーっと、メニュー読めないから読んでもらえる?確か、お水とかもちゃんと注文しないと来ないんだよね?」


「せやな。とりあえず、オススメっちゅーてた、シュニッツェルってやつでええんちゃう?」

忍足君がメニューを開いて、キョロキョロと見てる。
自慢しないって所がまた、二人の凄いところなんだよね・・・。
いつも凄いことしてるのに、これが普通です、って顔して。


「まずよ、シュニッツェルってなんなんだ?」


「子牛肉を、叩いて伸ばして小麦粉、卵、パン粉の衣をつけて、ラードで揚げ焼きにしたもんって書いとるな。レモンとかじゃがいも添えて食べるみたいやな。ソーセージもオススメって書いとるわ。自分ら、アレルギーとかはいけるか?」


「大丈夫です。」


「私も大丈夫だよ。」


「俺はアレルギーなぇよ。」


「アタシも大丈夫さね。」


「頼むわ。・・・Verzeihung!(すみません!)」


「Herzlich willkommen(いらっしゃいませ)」


「Wasser.Schnitzel und Wurst fur 6 bitte(水とシュニッツェルとヴルストを6人分ください)」


「Verstanden(かしこまりました)」

注文が終わったらしく、ウェイターさんが去っていった。
そう言えば、昔から店員さんに話し掛けるのはいつも忍足君だよね。
ドイツ語話せるって言ってた仁王君ならちひろにカッコイイ所見せたくて、話しそうなのに・・・。
日本でも、コンビニ行っても外食しても、店員さんと絡むのはいつも忍足君だった気がする。なんでなんだろ。


「でも、桜も凄いやん?臨床心理士って難しいんやろ?それに、他にも二つくらい資格持ってるやん?今も他の資格取ろうと思って、学校通ってるし!美夜子も、華道も茶道も書道もなんでも出来るやんか?」


「だろぃ?俺の自慢の恋人だぜぃ!」


「美夜子は、裁縫も着付けもできますよ。料理も上手ですし。」


「凄いよなぁー!」


「・・・・・・高等学校教諭、栄養士、薬剤師、調理師、医師国家試験、持ってますけど?産婦人科以外ならどの科でも担当出来るし、オペ失敗したことあらへんけど??癪やから辞めとったけど弁護士資格も取ったろか?」


「プピーナ。公認会計士、社会保険労務士、ファイナンシャルプライニング技能士、金融窓口サービス技能士、中小企業診断士、不動産鑑定士、システム監査技能士、持っとるけど?なんなら、行政書士でも取っちゃろか?」

ああ、いつものやつ始まっちゃった。
所々知らない資格があるけど、ほとんど聞いた事がある難しい、国家資格・・・。
忍足君、産婦人科以外ってところが、また凄い愛情だなぁ・・・。ちひろ以外の女性の身体見るの嫌なんだろうなぁ。
ちひろは地雷を踏んでしまったことに気づいて、あわあわし出す。


「す、すごいから!あたしのダーリン達は凄いから!えらいえらい。ヨシヨシ。」


「・・・全然分かってないと思うけど、仁王君が持ってる資格は年収5000万円以上だし、忍足君に至っては、7000万円以上だからね?ちひろ?いや、忍足君はもっとかも。何件か病院所有してるし・・・億は行くと思うよ?」

ちひろは隣に居る天才達を訳も分からずいつも通り撫でてる。
ちひろに撫でられて、嬉しそうに笑ってるなぁ・・・。
高給取りとは思えないくらいの性格・・・。
耳と嬉しそうに振ってるしっぽの幻覚が見える・・・。


「? それは凄いん?」


「馬鹿!!一般の年収、470万円だぞ!!おま、贅沢過ぎんだろぃ!どんなやべぇ男達に養って貰ってるかちゃんと感謝しろや!」


「え゛!!やっば!!!嘘やろ?!い、いやそ、その!ブラックカード?が凄いのは知ってるよ?なんで何枚も持ってんかは知らんけど・・・。現金で払うとその分のお金出さなあかんし、お釣りも貰わなあかんから、あたしと手ぇ繋ぐ時間を多くする為って言うし、貯金から引き落とせる便利なやつやろ??」


「・・・・・・お前、頭大丈夫か?ってか、お前らちゃんと教えてやれよ・・・。あんなーちひろ。クレジットカードにはランクがあって、一般カード、ゴールドカード、プラチナカード、ブラックカードの順になったんの。それぞれ、所持する為には必要年収とか、限度額ってのと、年間費ってのがあって、プラチナカードは500万以上の年収が必要だし、年会費は10万超えるわけよ。限度額ってのは、月に使える値段で、500万以上は1枚では使えないわけよ。だから、何枚も要るんだよ。それでもすげーのに、ブラックカードってのは、持ってるだけでもステータスなんだぞ?欲しいって思っても、相当な信頼とかツテが無いと、招待が無かったら契約出来ないんだよ。年会費も35万は超えるし、限度額も公表されてねぇくらいだぞ。」


「そんな早口で捲し立てんでも・・・。あたしは別にそんなにお金稼がんでもいーって言うてんねんけどなー。贅沢せんでも、幼馴染達が傍に居てくれたら何にも要らんし。雅治も侑士も特に欲しいもんない癖に何をそんなに稼いでんやか。お金ってただの紙切れと金属やろ?持って死なれへんし、そんなん持ってても使わんかったらお腹も膨れへんし、幼馴染達が傍に居てくれるなら、あたしは手を繋ぎながら餓死した方が満足出来んねんけどなー。」


「・・・ちひろのそういう所、死ぬほど愛してんねんけど。飯よりちひろ食べたいんやけど。」


「プピナッチョ。ワザと教えん訳じゃないんじゃよ。教えてもこんな反応になるきに、言うとらんだけ。」


「俺がお前らの女ならこれでもかってくらい位贅沢すんな!」


「贅沢って言うてもなぁ・・・。三人で住んで、毎日一緒に寝て起きて、身体も全部綺麗に洗ってもらって、髪の毛も乾かしてもらって、服も着せてもらって、ご飯も作ってもらって、強請ったら何処にでもデートに連れて行ってくれて、記念日とかイベントには旅行にも連れて行ってくれて、失神するくらい愛してもらって、これ以上の贅沢なんて無いんやけど・・・。何したら贅沢なん??雅治の苗字も貰えるし。」


「・・・。ちひろ、お前の存在がもうステータスだわ、それ。お前はどこかのお姫様か?」


「お、珍しく意見合うたのぅ、ブン太!分かっとるのぅ!!こんなええ女持っとる俺、凄いじゃろ!俺等の自慢のお姫様なんじゃよ!!」


「ちょ、待って?俺、中学から三年連続でクラスも部活も同じで、仁王とすっげぇ長く居るけど、そんな嬉しそうに笑うお前初めて見るんだけど。」


「雅治はいつも家とかデートしたらこんなんやけど・・・。」


「ちひろ、どうしたらそんなイカれた男達骨抜きにすんのか、マジで教えてくんね?」


「なんやねん、ブン太、浮気?その顔おもろ過ぎさよ。」


「だってよ!俺幼馴染の中で一番年収低いんだぞ?!もう、誰かの嫁になるしかねぇ!」


「丸井君?!落ち着いて?!お金は関係ないってちひろが言ってたばかりじゃない?!」


「お前ら貯金いくらだよぉ。ちょっと分けてくれやぁ。まさか、京とか言わねぇよなぁ?」


「けい???何それ。」


「俺等の通帳見た事あるやろ?あれ合したやつや。いち、じゅう、ひゃく、せんまん、おく、ちょう、けい、がい、じょ、じょう、こう、かん、せい、さい、ごく、こうがしゃ、あそうぎ、なゆた、ふかしぎ、むりょうたいすう。の順や。」


「忍足さん、全部覚えてるんですか?凄いですね・・・。」


「俺等、素数数えるの癖やからな。」


「等って当たり前のように仁王君入ってるのね。」


「俺が出来て、仁王が出来へんのは手術位ちゃうか。」


「ピヨッ。」


「自信満々過ぎだろぃ。流石にもっとあるだろぃ。」


「ふふ、侑士は雅治にいっつも負けてんもんなぁ。あ、円周率言うのは何回か勝ってたか。」


「プピーナ!今はもう負けんきに。」


「ほおん。ほな、やるか?」


「待ち待ち。雅治、侑士。いっつも円周率数え出したら三十分以上は時間経つやんか。試合終わってからにしなさい。」


「「・・・はい。」」


「ちひろ、一日で良いから変わってくれ。幸村君に頼んでさ。」


「えーけど、二人の愛は重たいでー?あたしにしか受け止められへんと思うけど?雅治の事本気で喜ばした事無いくせに、相手してあげれんの?扱い方難しいでぇ?」


「ちひろの笑顔と身体があったらいけんだろ。」


「勿論、あたしの笑顔も身体も必要やで?せやけど、それだけでこんなに骨抜きにする事出来るとおもてんの?めっちゃあんまぁい考えやな。桜の事骨抜きにしてから出直しといでや。」


「行けるっての!」


「ふうん?ほんなら、勝負してみる?」


「何のだよぃ?」


「雅治に何か擬音言うてもろて、それを先に喜怒哀楽とか何考えてるか携帯に打ってもらって、当てた回数多い方が勝ち。」


「良いぜ!こっちも伊達に一緒に居てねぇんでな!」


「おけ、ほな、雅治、お願い。」


「ピヨピヨ。」

仁王君がいつもの口調を話して、自分の携帯を取り出して文字を打って机に伏せた。


「丸井君、今のは?」


「今の?肯定で喜んでんじゃね?」


「へぇ?そう聞こえた?あたしには、丸井君と話してて勝負して、怒っとるように聞こえたけど?雅治、答えは?携帯上げて。」


【怒り。】


「な!まじかよぃ。」


「プピナッチョ。」


「ふふ、丸井君、今のは?」


「今のも絶対喜んでる!ちひろが自分の思ってる事を解ってくれてて、喜んでるって!」


「ぷ、あ、そう?あたしには、丸井君の名前何回も呼ぶから悲しんでるように聞こえたけど。雅治、答えは?」


【悲しみ。】


「はぁ?!まじか良ぃ?!嘘だろぃ!ズルしてねぇだろうな!」


「プピーナ。」


「これは、じゃあ悲しんでんじゃねぇ?早くちひろと話したいから!」


「ほうほう。あたしはなー、嬉しそうに聞こえたで。ズルしてるって思われる程、分かってること当ててもろて。ど?雅治?」


【喜び。】


「丸井、もうするだけ無駄や思うで。自分、完敗やんけ。ちひろは全問正解やし、理由も全部合っとる。」


「忍足君も解るのね?!」


「どんだけコイツと居ると思てんねや。」


「ふふふ、な?雅治の考えてる事一つも分からんくせにあたしになった所で、雅治に違和感感じられて、何もしてくれへんと思うでー?」


「お前、馬鹿なのか天才なのかどっちだよぃ。」


「雅治と侑士と千里の扱い方に関しては、天才。あたしの愛しい奴隷達やねんもん。当たり前やろ。」


「ちひろ?!流石にそれは酷くない?!」


「「はぁ・・・・・・・・・・・・・・・。」」


「ほ、ほら!仁王君と忍足君、絶対に怒ってるよ?!俯いて溜息ついてるじゃない?!早く訂正してあげないと!!」


「ん?あっはは、いつもみたいに素数数えてんねやろ。」


「なんでそうなるんですか。ちひろさん。」


「ぷぴ。ちんこ痛いからじゃ。」
「2.3.7.11.13.17.19.23.29.31.37.41.43.47.53.59.61.67.71.73.79.83.89.97・・・2.3.7.11.・・・。」


「ほら、数えてるやん。あっはははは!!」


「いや、なんで?!」


「なんでって、あたしが褒めたから嬉しくて悶えてるからやん。」


「何処が褒めてたんだよぃ!!つかなんで素数?」


「1で割り切られへんからやろ?なんで分からんの?皆。もう14年くらい一緒に居るのに。あたし達は結構皆の事わかるで?」


「1で割り切れんかったらなんなんさ?円周率のが長いさよ?」


「美夜子も桜も、分かるはずやけど・・・。ぴよしなんか、数学得意やのに。丸井なら、コレ言うたら分かるやろ?1、つまり1人で割り切られへん数字やからや。」


「・・・あ、ちひろが、忍足と仁王と千歳を割り切れねぇからってことか。」


「そゆこと〜。やることなすことあたし基準で可愛いやろー?」


「もーやめてぇな、ちひろ。試合待ってんねんでぇ・・・。こんなん集中出来へんて・・・。」


「ヤる時間あるかのぅ?」


「無いわ、阿呆。」


「二人が褒めて欲しそうにするからやんか。嬉しないの?」


「「・・・嬉しい。」」

ちひろが机の上に肘を着いて首を傾げる。
二人は小さな声で呟いて、ちひろに抱き着いた。
ちひろは慣れたように二人の頭を撫でてくすくすと笑う。
暫くすると、人数分の料理が運ばれて来た。
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