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□うまい飯の作り方
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何が食いたい?と聞いてきた山本に、オレは、ソバが食いたいと答えた。
そしたらヤツは材料があるから一緒に作って食べようかと言った。少し興味もあったので、オレは山本の提案に賛成したのだった。

山本に教わりながらの生まれて初めてのソバ作り。なんだか変な感じだ。めんどくせぇし、こいつに教わってんのも楽しくないし…。

「まだ広げんのかよっ」
「んー、もうちょっとな。あっはは!獄寺デコボコしてるぜ!厚さは薄く均等に…」
「うぜぇー!もうインスタントでよくねぇか!?」
「まぁー…、インスタントでもいいけどなぁ」

けれど、ちょっとだけ。ほんの少しだけ。オレは幸せだなぁとか思うわけだ。


「ここまで頑張ったんだし、もうちょっとだから!…な?」


幸せそうに、山本が笑うから。






【うまい飯の作り方】



生地を伸ばす作業は山本に仕上げてもらい、なんとか切るところまでやってきた。
四角い包丁を手に、いざ切ろうとわくわくするオレの隣で、怪我するんじゃないかと心配してあたふたする山本。これぐらい出来るってんだっ!!そう意気込み包丁で慎重に切っていく。

「………」
「獄寺、太すぎだろこれ!」
「るっせぇ!」
「しかもちゃんと切れずに繋がってんのな」

太さがバラバラ、湯で上がりは水分を含みソバが今以上に太くなるのでもっと細くしろだぁなんだかんだ言われて自分の出来の悪さに少し落ち込む。
くそう、こいつがびっくりするくらい上手く切ってやりたい!とか思うと同時に、誉められたい、なんて感情が、無意識のうちにソバ作りに没頭させていく。

「獄寺、」
「………」
「獄寺…?…っ!」

太すぎず、細さは均等に。コツがわかってきたところで目の前がガクンと揺れた。何かと思えば山本のヤツに抱きつかれていてあぶねぇよ!と声をあげた。

「んにすんだてめぇ…!」
「ははっ!なんかこうムラッとしたものが…、真剣な顔も可愛いなぁと思ってな」
「可愛い言うなてめぇはっ…!!」
「もーソバじゃなくて獄寺を食い―…」
「…っ!!果てろっ!」


なんとか切って、それを山本がほぐして、湯でて、ソバが出来た。見た目はぶっさいくなソバ。だけど、食ってうまいと思った。
山本も、一口食べてうまいと言った。

「なぁ獄寺、知ってるか?」
「なにを」
「のりソバと盛りソバの違い」
「たいして変わらなくねぇ?」
「そうなんだよ…!のりがのってるかの違いなのに料金は100円くらいちげぇの」
「あはは!なんだそりゃっ、なにかと思えばくっだらねぇオチだなっ!」

なんだろうか。
インスタントは簡単に出来て、腹減っててもすぐ食える。手料理は手間暇掛かるわ面倒くさいわで。
なのに、作ったほうがうまく感じる。ましてや誰かと作って、誰かと一緒にくだらない話でも笑い合いながら食うなんて。
一人きりインスタントより遥かにうまいもんだ。

「獄寺は何ソバが好き?」
「え、オレ?」
「うん」

「"お前と一緒に作って食うソバ"、なんてなー」


自分で言っておきながら思わずくすっと笑ってしまった。笑って、羞恥に襲われて、汁をすすった。
ふざけてそう答えたが、内心本気だったりしたのだ。

隣でポカンとしていた山本だったがいきなり真顔になり、嬉しくて鼻血出そうだと言ってきた。いや、恥ずかしくてこっちが鼻血出そうだぜ。

オレは話をそらすように"山本は何ソバが好きなんだ?"と聞く。

そしたらヤツは、


「オレは"獄寺のソバ"が好きだな」

なんて答えたから。

「ははは!お前きめぇー!オレよりひでぇ答えだな」
「なんだよ笑うなよー、本当なんだから仕方ないのなっ!」

お互い顔に熱を集めて笑い合った。そしてオレは思うわけだ。

尚更幸せだなぁ、と。
『山本のソバ』で。



fin.



コメントお返事》

山獄ふたりでラブラブ料理、と言うことで書きました、いかがでしたでしょうかっ(汗)

料理より食うほうメインじゃないか…!ってお思いになられているのではと思います、す、すみません(><;)

5万打お祝いのお言葉嬉しいです、拍手連載も楽しみにして下さっているようで…!あああありがとうございます、拍手完結に至っていなく申し訳ないです、長期休みに一気に描けたらと思っています;;

オマケと言ってはなんですが、ヘッタレボツ漫画版(内容はほぼ一緒)はこちらのほうからこっそりと。

めしぃいっ!!

小説とのリクエストでしたのに間違えて漫画描いてました、アホ野郎です。

気が向きました時にでも見てやってください(お辞儀)

花蓮様、ありがとうございました…!


れん


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