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□夢
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目の前の山本は目を丸くしていた。現実の山本もこんな顔をするのか…。
「ははっ!」
いきなり、山本が笑いだした。今度はそんな山本にオレが目を丸くする。
なにいきなり笑い出すんだこいつは……。
「寝ぼけてんのか?」
「は??寝ぼけてるも何も、今は夢の中で……!?」
時計に目を向けると9時を廻っていた。
耳を澄ませば、しとしとと雨の降る音も聞こえてくる……。
「なっ……!!」
「夢じゃないのな♪」
「はぁあっ!?」
自分が発した言動が頭の中を駆け巡り、顔がいっきに赤くなるのを感じる。
「あ"――――っ!!!!」
オレは布団を頭から被った。
山本と顔合わせられねぇ!!
「獄寺のこと何回も呼んだんだけど、出てこないからちょっと心配になってな、鍵も開いてたし勝手に入っちまったんだ。そしたら獄寺、ベットで寝てるし」
不思議と野球バカが笑っているのがわかる。
「お出迎えなかったから寂しかったけど、獄寺の本音が聞けてまじ嬉しい…」
山本は布団ごとオレを抱きしめた。
「もう一生言ってやんねぇ!!」
布団から抜け出て山本に向かって言ってやった。
……ぜってぇ耳まで赤くなってる。
微笑んでいた山本の顔が近づいてきて
近すぎて視界がボヤけてきて…
オレは目を閉じた。
会えなかった8日間を埋める
その優しいキスを待つために。
fin.