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□そりゃ君が好きだから
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週末。
獄寺の部屋。

ソファーで獄寺は雑誌を読んでて、オレはそんな獄寺を見つめてた。


「な―っ、獄寺ぁ」
「んだよ、野球バカ」


獄寺は雑誌に目を向けたまま。振り向いてもくれない。

オレがいるのになんでそんな態度なんだよ!オレより雑誌のがいいのかよ!

なんて、心の中で叫んでみたけど実際獄寺には届いてないわけだから、相変わらず雑誌をペラリとめくる動作を止めない獄寺にオレは言ってやったんだ。


「………シたい」



― そりゃ君が好きだから …




バシィィイッ!!!


そう言った瞬間、獄寺は持っていた雑誌でオレの頭を勢いよく叩いた。

「いってぇ…!」
「ふざけたこと言ってくんな!一人で果ててろッ!!」

獄寺顔真っ赤。
不意打ちが効いたかな。

雑誌で叩かれた頭がじんじんしていたけどこの頃のオレには慣れっこだった。

気にする間もなく

「んな〜っ獄寺ぁっ!!獄寺と一緒に果ててぇんだよ、…!」

なーんて、言いながら獄寺に詰め寄れば、更に顔を真っ赤に。言葉がなかなか出ないと思われる口はぱくぱくさせた。


可愛い―なっ


「イ、、ヤだ!!今日はもうぜってぇヤらねぇ!!」
「なんでっ!?」
「ヤらねぇっつったらヤらねぇ!!」


こんな会話を何回か繰り返した。
詰め寄っては雑誌で攻撃され、クッションを盾に突き進めば、クッションのド真ん中にストレートパンチを喰らわれる。



だんだん……
悲しくなってきた……



「……んな拒否んなくてもいいじゃんかっ!!」


オレは拗ねて獄寺のベットへダイブした。フワッと獄寺の匂いがオレを包む。

…あぁー……気持ちーっ

獄寺に抱きしめられているみたいで心地いい…。
 

ベットの上で一人。
うつ伏せになってうとうとするオレ。うう、眠くなってきた…。



「……!!?」

次の瞬間、突然腕が持ち上げられ驚いた。

何事かと思えば。


「よいしょっ…」

小さく呟きながらオレの腕の中に入ってきたのは獄寺だった。


「てめぇ…昨日何回ヤったと思っていやがる……!!てめぇはいいかもしんねぇけどなっ、オレは腰が痛いんだよっ!!オレの身体くらい少しは考えやがれ万年発情期バカッ!!」


頬っぺた赤くして睨みつけてくる。
全然迫力がないぜ、獄寺。そんなん、、オレを煽らせるだけだ……!


言葉に詰まってしまった。
これでもかと睨む獄寺だけど、オレから見たら上目遣いなわけで、むちゃくちゃ可愛いわけで。

「……っ!」
「なにもしねぇって…約束出来んなら一緒に、、寝てやっても……いい…」


どっひゃああ―――――――っ!!!!
かっ、、可愛いッ!!

そんなこと言われちゃ困る!!
んな表情すんなっ!!!

山本武14才、只今人生で一番のピンチを迎えました。神様、どうかオレに理性を与えてやってください。


「約束出来んのか!?出来ねぇのか!!?……一緒に寝てぇのか、寝たくねぇのか!!はっきりしやがれっ!!」

固まっていたオレに向かって獄寺はそう言った。


そんなっ!!
一緒に寝てぇに決まってるだろ!!


「………」
「………」


ばたばたした後の沈黙はすごく空っぽになった気がした。
けど沈黙の間、お互いの脳内はフル回転。音にはならない動き。

結局、獄寺と比較したら大して実のないオレの思考回路は


「約束…出来る!!」


って答えに達した。
正直自信ない……。



数分後。

しばらく、落ち着きなくモゾモゾとオレの腕の中で動き回ってた獄寺も今は夢の中。


「…っ!!」

無防備な寝顔にオレの息子が反応しだす。


だぁあ!!
約束なんてするんじゃなかった!!


今になって後悔。

こんな近くにいるのになにも出来ないなんて 辛すぎるっ!!

反応するんじゃねぇ!!
オレの息子ぉお!!


やっぱりさっきのは嘘です神様。今の状況のほうがオレ的ピンチ。

ヘルプミィ。
神様は世界共通語の英語を知っているでしょうか。知っていたらオレに助け舟を与えてやってください。


むらむら
そわそわ


見れば……半開きになっている唇。

舌いれてぇとか獄寺の甘い声が聞きたいとか、そのうち変な妄想までしてしまう。


サラサラな髪。

顔を埋めてぇ……。
撫でて殴られてぇ……。


チラリと覗く鎖骨。

甘咬みしてぇ、
キスしてぇ…………!!

…………ぁあ!!
キスぐらいならいいんじゃねぇ!!?
駄目かな……。

……いいよな!
キスなら獄寺腰痛くしねぇしなっ!!


思考回路はめちゃくちゃになっていた。
無理矢理、理由付けたけど。

獄寺が起きた時に気づかれて怒られるのは目に見えている。
(怒った獄寺も好きだし、獄寺に怒られるのも好きだからなー、オレ)


いろいろ考えたけど、構わずに愛しい寝顔にキスを落とした。
起こさないように優しく触れる。

額、目尻、頬、唇。
輪郭をなぞって首筋へ 。


「…んっ」

獄寺はくすぐったそうに寝返りをした。
露になったのは獄寺の白い肌。

ぁあ……!!
服脱がしてぇ!!


理性にストップをかけるが手は自然に動き、ボタンを外していく。

触れるようなキスはだんだんと強く、赤く色を付けるキスへと変わっていった。


あ―――っ
もう止まんねぇ………


また、ちゅ、と音をたててキスをする。
白い肌は赤い印を引き立たせた。





……………


どれくらい経ったか。



「ん――っ……」

獄寺が目を覚ました。


………………
………………………!!


や、やばいっ!!


そこで、はっと我に帰る。


「んだ…………っ!!!っ…山本、てめぇ!!!」


獄寺も気づいたみたいなの、な。


「んでオレ上半身裸なんだよっ!!てか…っ!!キスしすぎだっ!!こんな隠しようもねぇところにまでキスマークつけやがって…!!!」


エスカレートしすぎた。
あの後………獄寺にキスするのに溺れて、気づいたら。

そうなってた。


「…っ果てろ!!」

獄寺は枕とかクッションとか投げつけてきた。


「はははっ!!」
「だあー!お前ムカつく!いっぺん死ね野球バカ!」

笑いながら逃げたり受け止めたり。


こんなにキスに夢中になってしまうのは、獄寺のことが誰よりも好きだから。



「昼寝して休んで……ちっとならヤってもいいかなとか思ったのによ…!!てめーなんかもう知らねぇ!!」
「え…!!獄寺!!んなこと言うなよっ!!ごめんっ!約束守れなかったこと謝るからっ、!!」

必死になって言えばオレのことを笑う獄寺。



ほんと。
可愛い―なっ……。


思わず抱きしめれば、真っ赤な顔して殴られた。




あ――好きすぎてやばいです、神様。どうしてこんなに好きなんでしょうか。獄寺が好きすぎてオレはショートしてしまいそうです。

もう一生離れたくない。
離れられない。


明日からまた学校…。
ツナはもちろん、みんながいるわけで、人前では色々と獄寺にしたいことも限られてくるから。

オレにとっては我慢の5日間。


たまに我慢できなくて、獄寺に怒られることもあるけど。


獄寺と一緒にいる、言葉を交わす、肌と肌が触れ合う。

それだけで幸せ。


全部、全部、『そりゃ君が好きだから』の理由。


fin.
 

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