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□屋上日溜まり、笑う君
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授業をサボって屋上で昼寝することなんてオレにとっては日常茶飯事。
その日も授業が簡単すぎて、つまらなくて…いつものように屋上に来て昼寝をしていた。
空を見上げる形で寝る。
(キレーな空だな……)
透き通るような青が目に映った。手を伸ばせばその青に手が浸りそうで。
優しい日差しと髪を撫でる風。
子守唄を聞いているように心地よく、間もなくオレは眠りについた。
― 屋上日溜まり、笑う君 ―
アホ牛が泣き出した。
10代目に迷惑ばかりかけてやがるから、オレがゲンコツ一発くれてやったからだ。
10年バズーカを取り出して、自分に向けて打つ。
いつもなら10年後ランボが登場するわけなんだが…。
「うわああああん!」
子供ランボが巨大化した。
レンジャーものの悪役怪物が巨大化する、そんな感じ。
わけもわからず、とりあえず逃げてた。けど、間もなくアホ牛のボンバーヘッドから放たれた飴玉がオレを直撃。
(お、おお、重い…!)
「重いいい!」
そこで目の前が真っ白に。
真っ白、から、空の青。
光が眩しくて目を細めた。
(あ、ああ。そういやオレ寝てたんだ…。)
変な夢を見て気分はブルー。
気分転換と言うか、光が眩しいから寝返りをうった。
目がしぱしぱ。頭はスロー。
どのくらい寝たんだろ。
あったかいな。
んん、なんか重い……。
夢の余韻、なのだろうか。
ぼーっとしてしまう脳内。
あ、山本だ。
山本の寝顔。
アホ丸出し。
「…んん、ん!?」
なんで山本がいんだぁ!?
一気に眠気が散った。
隣を見れば山本がいた。
感じている重みは山本の腕の重み。
オレは野球バカに抱きしめられた形で寝ていた。
寝息を感じるほどに顔と顔が近い。
ちょっと間違えればキスしてしまうような距離。
「…っ!!」
顔が真っ赤になるがわかった。
「こら…野球バカッ、起きろっ」
なぜか小声で言う。
だって、よ。
すげぇ気持ちよさそうに寝てやがるんだ…。
最近、部活忙しいみてぇだしな……。やっぱ疲れてんのかな……
。
「てめぇはバカなんだから授業出なくちゃいけねーんだぞ……」
伝わってくる山本の温もりが気持ちいい。
山本の匂い。
好きだな。
じ―――っ
見つめる…。
起きる気配がない山本。
見つめてる自分に恥ずかしくなって、顔を背けた。
再び夢を見た。
前回と同じ。ランボが10年バズーカを自分に向けて打つ。
と、いきなりランボが膨れだした。風船のように。
空間の端まで追いやられ、成す術を無くしたオレは、未だに膨らみ続けるランボによる圧迫が強まり、窒息寸前。
く、苦しい……!
目の前が真っ暗になった。
真っ暗、真っ暗なまま。
いや、気付けば山本に抱きしめられてた。
きつく、これでもかと言うくらい。
「や、山本!苦しいっ…い、い加減離せっ!!」
「うわっ!!」
見上げた山本の顔は、はっとしたような表情をしていた。
「オレを殺す気か!」
「わりぃ、つい…な」
ニヘラと笑う。
その笑顔に、オレは弱い。
「だって獄寺、可愛い寝顔して 、、寝言でオレのこと呼ぶんだもん!!抱きしめたくなるだろっ」
はぁあ!?
何寝言言ってんだオレは…!!
つか、夢に山本は出てこなかったぞ!なんで、なんでだ…!?
「……し、知るか!?んなこと!!」
そう言うと、更に抱きしめる力は増して山本は微笑んだ。
(もうなんなんだよこいつ!)
こんな時に、実感させられる。
山本のこと好きだってこと。
実感させられて、恥ずかしくなる。きっと顔が赤くなってること、山本にバレバレだ。
あっち行けよ、と突き放せば、こっち来いよ、と引き寄せられた。
暖かな日溜まりの中。
山本が、また笑った。
fin.