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□子供と大人
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子供はいつから、大人になのだろう。

20歳を過ぎたら大人?
一人暮らしできるようになったら大人?
難しい計算式が解けるようになったら大人?


セックスを、したら。

"大人"になるのか?




― 子供と大人 ―…




薄暗い部屋。
繋がった場所から漏れる粘膜の音が耳を犯す。

呼吸を乱して、発する声はあいつの名前ばかり呼んで、たまに訳わからないことも言ったり。

何度も果てているはずなのに、まだ身体は欲している。

上にいるバカの首に腕を回して、背中に爪をたてた。揺れる体を押さえようと必死になってる自分、何やってんだか。



「獄寺、大丈夫、か…っ」

途切れ途切れにそう言った山本。答えの代わりに口づけをすれば、脳内を痺らせるような深いキスが始まった。

酸素より、山本を求める口。
鼻と鼻はぶつかり、山本の短い髪は額をくすぐって。


ギシギシと鳴るベットは生きているように動いた。






いつから子供は大人になるの?

酒を飲むようになったら、
煙草を吸うようになったら、

大人になるの?


早く大人になりたい、一人前と思われたい、と願っていた幼い頃の自分が、今になっても時々叫ぶソレ。


大人って、どうやったらなれるの?

感情にコントローラーをつければ、
過ぎていく時を眺めていれば、


セックスをすれば、



大人になれるの?





「…っ、あぁ!」

声を漏らして、オレはまた白い液体を山本の腹に向かって放った。

反射的に後ろが収縮すると、山本も小さく声を漏らしてオレの中に熱いモノを放つ。

それでも動きをやめない山本によって中はもうぐちゃぐちゃ。
中は泡立っていやらしい音が部屋を支配した。



セックス。
してるよ、今。

オレ、大人になれた?


……ううん、なれてない。


山本からの刺激を受け入れるだけで精一杯。なにもかも、山本がしてくれて、結局なにもしてない。

こんなの、"大人だ"って言えない。



平らで面白くもない胸を山本の大きな手が優しく撫でて、突起をいじって。

「獄寺、好き、だ…っ」


呪文のようにその口から出る言葉に答えられずに、オレは喘ぐばかり。


なんで言えない?
好きだ、この一言がなんで言えないのかな?

オレは思う。

難しい計算式が解けるやつより、煙草を吸うやつより、セックスをするやつより、


自分に素直になれるやつのほうがずっと大人なのだと。

意地張るオレは、まだまだ子供なのだと。





静かになった部屋。
身体はまだ熱を帯びている。

オレは山本によってキレイになったベットにうずくまって、一人考えていた。
"大人"について。


そこに、山本が水の入ったコップを持ってきてオレに渡した。


「……?獄寺、具合悪いか?」


コップに入った水をぼーっと眺めていたオレに、山本が心配そうな顔して聞いてくる。

なんだか泣きたくなってきた。


「や、別に…なんでもねぇ」
「…そうは見えねえけど」

「……ん、大人にはまだまだなれねぇなーと思ってよ」
「早く大人になりたいのか?」
「できるなら今すぐ、大人なりたい、な」


山本は少し考えた様子を見せた。天井に視線を泳がせて、うーんと唸る。
言わなきゃよかったかな、なんて思っているうちに山本は視線をオレに戻して言った。


「焦らなくたっていいんじゃね?ほら、なんか意識すると空回りしそうというか、なんつーか…」


「ゆっくり大人になれれば、さ。オレもゆっくり大人になるから、一緒に大人になっていけば、何も怖くないと思う、のな」


笑うバカ。

やっぱりオレから見りゃお前は十分大人だ。

普段はアホ面してるけど、やるときはやるし。


でもまあ、お前がそう言うのなら。




「バカ、お前なんか置いていってやる!」
「それなら置いていかれないように獄寺にしがみつくのみなのな!」

「う、わ…!」



被っていた布団の上から山本に抱きしめられた。
苦しくて、苦しくて。

離れろだのウザイだの散々言ったけど、山本の腕の力は緩まない。
いつの間にか布団はベットの下に落ちていて、山本に直接抱きしめられていた。


「好き、獄寺…」

耳のすぐ近くで聞こえた声。


ここで素直に答えれば、一歩大人に近づくのだろうが、まだまだ子供なオレは、


声にならない言葉を、
山本に向かって発しただけ。



『オレも、好きだ』

自然にそんなことが言えるようになるには、もっと時間が必要らしい。

けど、山本が一緒に大人になろうと言ったから、


オレは、もう少し山本の腕の中で"大人"しくしていようと思った。


fin.


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