text8059
□音楽室で(前)
1ページ/1ページ
その日、10代目は風邪で学校を休まれた。
10代目の家に行き看病させてほしいと頼んだが、「学校に行かないと駄目だよ」とおしゃったので渋々学校へと向かう。
【音楽室で(前)】
学校に着いたのは2時間目の半ば。
授業中にもかかわらず、ズカズカと入り込んで、机の上に足を乗っける格好で自分の席に座る。
オレが遅刻してくることは別に珍しいことじゃない。
教師だって何も言わねぇ。見てみぬふりをするだけだ。
ただ…、問題が起こったのは5時間目のことだった……。
珍しく山本はオレにひっついてこなかった。
だけど、そう思ったのもつかの間。昼休みになれば、のこのことやってきやがった。
「なぁ獄寺ぁ、次の移動教室一緒に行こうぜ!」
屋上のフェンスに寄りかかって一服するオレの隣で山本が言った。
「なんでてめぇなんかとっ!」
今日、初めて言葉を交わして少し早く心臓が波打った。
まだ消えない違和感。
休み時間のたびにオレのとこに来て抱きついてくんのに……。
しかも今更かよ。
まぁ…、話もしないまま今日が終わっちまうのもあれだしな…。
結局は山本がかまってくんなくて寂しがってた自分がいて…そのことを実感したり。
そんな自分にも対応できなくて違和感は募るばかり。
「お、予礼なのな、行こうぜ獄寺!」
無邪気に笑う山本。
「……ったくしゃ―ねぇな…」
その笑顔に、オレは逆らえないらしい。
けど、こんときはわからなかった。山本のその笑顔には裏があったってことを。
教室に教科書とかを取りに行った時には、もう誰もいなくて。
空っぽの教室に授業始まりのチャイムが鳴り響いた。
5時間目は音楽。
東校舎の4階にある音楽室へと向かう。
その間も山本はオレの隣で、10代目の話やら野球の話やらしてきた。
適当に返事をする。
いつもとかわらない会話に違和感は少しづつ薄れて言った。
階段を登りきり、音楽室へと続く廊下を歩き出す。音楽室は一番奥だ。一歩先に音楽室にたどり着いたのはオレ。
ガラッと教室の扉を開く。
「……は?」
思わず間抜けな声が出てしまった。
「誰もいねぇじゃねぇか」
「みんなフケたんじゃね?1時間目の獄寺みたいに」
「んなワケあるかっ!!」
「まーまー」
後から教室に入って来た山本は教科書を近くの机の上に置いて、オレのほうにやってきた。
「他のやつは理科室に行ったのな」
にこにこな山本。
まただ、違和感を感じた。
こいつの今の笑顔はいつもの笑顔じゃねぇ…。
「SHRで言ってたんけどな、音楽の先生が出張だから理科に変更になったらしいぜ。そういや『間違って音楽室になんか行くなよ』とか担任が言ってたな」
「んでてめぇはオレと一緒に音楽室に来やがるんだ!?だったら変更になったこと言えっつの!!」
そう言いながらオレは山本を通り過ぎて、音楽室を出ようとした…が。
「ははっ!せっかくだからいいことしようぜ獄寺…」
「は!っな、てめ…!」
音楽室には鍵がかけられていて
「っ!?」
気付けば後ろは壁。
違和感が、一気に危機感へと変わる。
「な?獄寺…」
時既に遅し。
逃げ場なんてなくて。
「こんの野球バカッ!ハメやがったな…!」
「オレ5時間目が音楽なんて一言も言ってないぜ?遅刻して学校来た獄寺が悪い」
「っん…!!」
無理矢理口をふさがれて、手首を掴まれて、背は壁に預けて。
「はなっ…!!」
話そうと口を開けば山本の舌が入って来た。
「っ…ん」
それから、いつ人が来るかなんてわからねぇ状況にビクビクしたがら、山本にヤられたのは言うまでもない。
fin.