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□冬が教えてくれたこと
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冬。

暖房器具に依存して行動力が低下。コタツに一歩踏み入れたらなかなか抜け出せねぇ。
寒くて寒くて、あらゆる気力が失せてしまう季節。

オレの、大嫌いな季節。





【冬が教えてくれたこと】



ベットから飛び起きると寒さと眠気で鈍る体を無理矢理動かして用意を始めた。

外に出る。朝の冬空が目に入った。木の葉は散り、北風に吹かれ寒そうに震えている。それを見て余計寒さを感じてしまった。

最近、外出する際は決まってこの恰好。
首にはマフラー巻き付け、タートルネック、カーディガンの上にコートを羽織った。そしてジーパンをブーツインした完全防備。
と、言いたいところだったが今日のオレはあいつを忘れてしまった。あいつ、なんで忘れてしまったのか。なんでもっと早い内に気付かなかったのか。ぶつぶつ考えながらも戻らずに足を目的地へ進める。


「ううぅ、さみぃ…」

かじかむ手の平をコートのポケットに突っ込んで10代目の家へ向かっていた。走れば体も暖まるのだろうが、体が暖まるまでの風当たりの冷たさを考えたら頭の中の選択肢からそいつは削除された。
なるべく冷たい風に当たらないように、かつ、日向を通るようにしていると、前方に見覚えのある人影が。

思い切って呼び止めるとそいつはあったかそうな笑顔を向けた。

手袋を奪い自分の手にはめる。相変わらずそいつは笑っていた。

寒くないのか?

そう聞くと、寒いのな、と返ってきた。だったら手袋奪われて笑ってんなよ。

いつも調子を狂わされる。

「はんぶんこ、な」
「え?」

自分の物でもないのに、そう言って手袋を片方渡した。手元に残ったもう片方に両手をまとめて突っ込み、かじかむ手を少しでも温めようとした。その様子を見て隣のやつは笑っていた。

そりゃないだろ。転んだら顔面打つぜ!……って、バカにしてんのか!だったら片方返せ!

また、自分の物でもないのにそんなことを言ってしまった。ハッとして、冗談だ、と小さく溢す。


すると、手袋から左手が出ていき、暖かなやつの体温に覆われた。

『こうすればいいのな』


早朝だったからか、辺りに人は見当たらず、その手を振りほどく理由が見つからない。

『ま、まぁ、しょうがねぇから暫くこうしといてやるよ』


手袋をはめた右手よりも、左手のほうが暖かいのは、きっと気のせいなんかじゃない。


「冬も悪いもんじゃないな」


呟くと、山本も同じことを口にした。太陽みたいな笑顔。つられて笑う。

胸が暖かくなるのを感じた。
これが、幸せ、ってやつなんだろうか。

大嫌いだと断言していた『冬』に教えられたことは、そんな、『幸せ』。



fin.





【後書き】

弱虫バンドの雪笑顔を聞いていましたら、はっ!と浮かんだお話でした。

寒い寒い冬でも、二人の間は暖かな笑顔で溢れていることを願います!
いや、寒い寒い冬だからこそ、その暖かさがわかるものなのでしょうね。


駄文失礼しました;)!星苺様、ありがとうございました!(お辞儀)




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