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□贅沢な悩み
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「お、ま、えっ、うぜぇ離れろ…!」
「なんで…ったぁ!殴んなよ!」


オレは獄寺のことが大好きです。卑怯だったかもしれないけど、友達って特権を利用し近づいて、片思い歴1年半にして告白をしました。獄寺は長い沈黙の後で縦に首を振った。オレは恥ずかしながらも泣きました。それくらい、好きになってたのな。

だから、獄寺もオレのこと大好き、な、はずです。(言われたことないけど)

それからと言うもの、二人きりのときは我慢なんかしないでしつこく抱きついてしまいます。最初に述べたように、オレは獄寺のことが大好きだから…!離れてる時間すら惜しくてずるずると。けど、獄寺は、それを嫌がる。嫌がるんです。




【贅沢な悩み】



獄寺はオレのこと好きじゃないのか?なんて不安が募りつつある今日この頃。そのせいか部活でミスが続き、余計に心がズタズタになっていた。

金曜日。
何時もなら獄寺の家に押し入って嫌がられてもべたべたしてるけど、本日はそんな気にもなれなかった。
家に帰るなり制服のままベッドに倒れ込む。今獄寺は何してんのかなとか考える片隅で、また不安が溢れて来た。

キスもするしそれ以上のこともした。けど、けど………!


「好き、って。言ってくれたことはないのなぁ…」

練習の疲れもあってか瞼が重くなってきた。風呂にも入ってないし飯も食ってないし、何より獄寺に会ってないし、このまま寝るわけにはいかねぇ。なんて思いながらも夢の世界へと引き込まれそうになったその時。

「野球バカっ…!家に来ねぇと思ったら帰っていやがったのか!!起きろ!」

いきなり部屋のドアが開くなり獄寺がそう言いながら入って来て、オレの胸ぐらを掴み上下に振った。
一瞬、夢を見ているのかと疑ったが、そうじゃなかった。


「お前、このあいだ来た時手料理食いたいっつってたろ。だから今日は作って待っててやったのに」
「…え?」
「おらこい!飯が不味くなっちまうだろ!!」


手を引かれるままに家を出て獄寺ん家にやって来た。テーブルの上には獄寺の作った料理たち。獄寺の手を見れば、絆創膏だらけで、すごく、一生懸命、作ってくれたのがわかった。


「…山本?」
「泣けるほど上手いぜ獄寺!」
「そ、そりゃぁよかったな」
「うん、…ありがとな」

その後は珍しく獄寺がオレにべたついてきた。獄寺にべたべたするのを最近抑えてたけど、後ろから抱きつかれてうなじにキスをされてしまっては我慢なんて出来るはずがない。

「ご、っくでらぁあ!」
「いって、いきなり飛び付くなバカ本!」
「なんか今日の獄寺違う」
「てめぇだってこの頃変だったじゃねぇか」
「…ん?そうだったか?」
「しつこく抱きついて来ねぇし部活も調子悪いみてぇだし、元気ねぇ。バカはバカらしく笑えっての」

獄寺のことで悩んでたからなのな!そう声を出す前に獄寺の唇が重なった。獄寺からのキスは初めてだったから、どうしたらいいのかわからなくて、あたふたあたふた。ただ、直ぐに離れないことだけはしっかりと胸の中で願っていた。

そっと離れたのは何秒後のことだったか。目を開けるとで真っ赤な顔の獄寺がオレを睨み付けていた。

「オレは、元気ない山本なんて大嫌いだからな。あんまり困った顔してっと果たすぞ!!」

また胸ぐらを掴まれて上下に振られる。オレが自然とため息が出すと、それに獄寺が気がついて、ため息してっと幸せが逃げるぞ山本、吸え!って言われた。
抱き寄せて、またため息。なんか悩みでもあるのかよ、って獄寺が耳元で心配そうに言う。

「獄寺、好きだ…」
「…んなこととっくにわかってらぁ」


獄寺が照れ屋なことも恥ずかしがり屋なことも、片思いしてた頃から知っていたことだったのに。
オレは、なんで気付かなかったんだろうか。こんなにも、全身で獄寺に好きって言ってもらっていたというのに、言葉ばかりを欲しがっていたのな。
不安なんかもうどっか遠い所へ行って、代わりに幸せな気持ちがやって来た。込み上げる幸せが、抱えきれなくなってため息として出ていく。

「はぁ…もー幸せなのな」
「は?悩みはどうなったんだよ」
「ん?今解決したのな」
「?な、ならいいけどよ…」


ため息が出るほど幸せでいいのだろうか、と言う思いが悩み事だとしたら。

あぁ、それはなんて贅沢な悩みだろうか。


fin.



【後書き】

素直な獄寺、とのことでしたがむしろ素直じゃない気が…!
ひとつひとつの小さな行動や言葉で、獄寺は山本に好きだと言ってます。それに気づく山本、なお話です。
ある意味で素直な、獄寺ありのままの愛情表現かと。

相変わらずぐだぐだな文ですみません;;リクエストありがとうございました…!



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