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□所詮オレは問題児
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眉尻に傷を負って以来、肉体的にも精神的にも強くなろうと誓った。
そして並盛中に入学。そこで耳にしたのは最強と噂される風紀委員長の名だった。どれ程強いのか。怯えた表情で噂を口にする生徒たちを見ては、その力量に興味を持っていった。

そうだ。ことの発端はここからだった気がする。初めはただの興味だけ。強さに惹かれただけだ。

何処で踏み間違えてしまったのだろう。もうこの変化に気づかない振りは出来ない。嘘で塗り潰すことも出来ない。

それほどまでに。





【所詮オレは問題児】



ガラッといい音がした。
名前を呼ぶと、部屋の奥でペンを走らせていた彼がため息をついた。

「…呼び出しもしていないのに、何で君はこうも仕事の邪魔をしにくるんだい?」
「雲雀!また一勝負しようじゃないか…!!オレは負けていられんのだっ!」
「君にかまっている時間なんてないの、わからない?」


雲雀に勝負を挑んだ当初から二年が経とうとしていた。度々勝負を挑みに自ら応接室に訪問。それに加え、学校生活について指摘されるのに呼び出しを受けることも多々あったので、教室から遠いこの応接室も随分と見慣れてしまった。
今日も"勝負"を理由に応接室へ入室。もちろん、勝つため、強くなるために来るのも確かだが、それ以上の意味があった。

「ふん、直ぐに咬み殺してあげる」

トンファーが飛んで来る。身構え、そのひと振りひと振りを見定めては軽いピッチで避けた。
初めのころの勝負ではこのトンファーすら避けきれなかったのだから、少しは成長したものだな、と自分なりに実感した。
しかし次の瞬間、視界は大きく回転することになる。トンファーに集中していたためにがら空きとなっていた足に蹴りを入れられたのだ。そのまま倒れたオレに、雲雀が股がりトンファーをつきつける。

「また僕の勝ちだね」

ふっ、と微かに柔らかく笑った雲雀を見逃しはしなかった。これが先ほど上げた"それ以上の意味"である。何よりも、この、ほんの一瞬の笑みを見たいがため。

「また負けてしまったか…!雲雀!次は極限勝つからなっ!」

背を向けた雲雀に荒々しくそう言うと、オレは部屋を出た。雲雀は気付かないだろうな。オレが笑っていることに。

でも、心の何処かでは笑えていない。それは所詮問題児としか彼の目には映っていないからだ。

そもそも雲雀に迷惑を掛けたいわけじゃない。好きで問題を起こすわけではないのだ。
ただ、仕事の邪魔をするとわかっていながら勝負を挑みに行ったり、問題を起こしたり、反省はするものの、"会える"という喜びが着いてくる。

矛盾、なのか。ない頭で考えても答えが見つからない。今までは直感で動いていたからな。悩む必要などなかったのだ。
この心境をどう打ち破ろうか。自分の中でひしひしと葛藤が続く。

「極限、複雑だ…」

静かな応接室前の廊下。ふと後ろを振り替えれば、

「勝負、負ける気ないから。何時でも咬み殺してあげるよ」

廊下の壁を背に、ちらりと雲雀が此方を見る。一言告げると、彼はまた部屋の中へ入っていった。

静かな、廊下。
心臓の音が鳴る。


所詮オレは問題児だと言うのに。それでも傍にいたいと思ってしまうのは、これが恋心だからなのか。



fin.


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