text8059

□夢
2ページ/3ページ




見上げたら山本の顔が泣きそうに眉をひそめていて、自分のとった行動に少し後悔した。

なんでこんな行動ばっかとっちまうんだろう。

ほんとは抱きしめたいし、抱きしめられたいし、キスだって…したい。

会えなかった5日分の気持ちを確かめ合いたい……。



山本……。



****


雨の音で目が覚めた。

気付けばベットの上。
時計の針の音が部屋の静寂を引き立たせている。


「夢かよ……」


布団にくるまり、さっきまで見ていた夢を思い出す。
ところどころ、モヤモヤとしか思い出せない部分もあった。けど、目覚めた今も鮮明に覚えているのは、あの時の山本の表情…。

8日間も会えてなかったのに。
抵抗されたら悲しいよな。
ほんとに自分のこと好きだって思ってるのか…不安になるよな。



ふいに時計を見れば4:30くらいだった。

山本が合宿から帰ってくるのは7時近くになると聞いる。


あと2時間半か……。

まだ4時半だというのに、雨のため、空は薄暗く、カーテンも閉まっていたので部屋の中は余計に暗かった。


雨の音が心地良いな…。


オレは眠気に襲われ、また夢を見た。







山本がオレの隣で寝ていた。

今度は、これは夢だって、自分でもわかっていて

だから、

どうせなら、


普段言えないような気持ちを言っちまおう。


自分から求めちまおう。


そう思った。





「…ん〜」

寝ている山本の上に乗る。
見下した山本の寝顔が愛しくて、オレはキスをした。
起きているのか、いないのか。
構わずに半開きだったその唇から舌を入れる。

いつもは山本がリードするこの行為。こんな状況だからこそ、オレからできる。


「んっ…!?」

「はっ」

山本がオレの顔をガッチリと掴んでキスを更に深く求めてきた。

「てめ、起きっ、〜っ!!」
話すらさせやしねぇ。

体が火照ってきて顔も真っ赤になるのを感じる。
山本のキスにクラクラしながら、リアルな夢だな…と思った。


いつの間にかキスは山本がリードしていてオレは逃げ腰。



長いキスは離れる唇と唇にもどかしいさを感じさせた。




「ははっ、今日はずいぶん積極的なのな」

山本がニヘラと笑う。
夢だとわかっていても、なかなか素直になれやしない。

「会いたかった」

「寂しかった」

「獄寺…」

「好きだ……」

山本が途切れ途切れに口に出す、8日間の気持ち。

今は言葉より、抱きしめられることで伝わってくる山本の温もりのほうが、山本の気持ちを伝えているように感じる。

このリアルさはどこからくるんだか…


こんな話を聞いたことがある。
夢に出てくる人は、夢を見たやつが、そいつのことを想って、夢の中に登場させちまうとか。
逆に夢に出てきたやつが、夢を見たやつのことを想って夢の中に自分を登場させちまうとか…。


山本のことを想ってるからこんな夢を見るのかもしれねぇ…。
それとも山本もオレのこと想って、夢を通して会いに来てくれてんのか…?


山本に抱き締められ、山本を感じ、会えなかった8日間の寂しさが込み上げて来た。




「オレも………山本のこと」


「……好きだ」




やっと出た言葉。


「ごくで「てめぇが居なくて落ち着けなかった。てめぇの声が聞けなくて寂しかった」

山本の背に手を回し、抱きしめ返す。

「なんかムカつくけど、オレん中じゃ、てめぇの存在なんて計り知れねぇほどでかくなってんだよ…!!」

幸い、顔が見えない状態で良かったと思った。



次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ