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□夢
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見上げたら山本の顔が泣きそうに眉をひそめていて、自分のとった行動に少し後悔した。
なんでこんな行動ばっかとっちまうんだろう。
ほんとは抱きしめたいし、抱きしめられたいし、キスだって…したい。
会えなかった5日分の気持ちを確かめ合いたい……。
山本……。
****
雨の音で目が覚めた。
気付けばベットの上。
時計の針の音が部屋の静寂を引き立たせている。
「夢かよ……」
布団にくるまり、さっきまで見ていた夢を思い出す。
ところどころ、モヤモヤとしか思い出せない部分もあった。けど、目覚めた今も鮮明に覚えているのは、あの時の山本の表情…。
8日間も会えてなかったのに。
抵抗されたら悲しいよな。
ほんとに自分のこと好きだって思ってるのか…不安になるよな。
ふいに時計を見れば4:30くらいだった。
山本が合宿から帰ってくるのは7時近くになると聞いる。
あと2時間半か……。
まだ4時半だというのに、雨のため、空は薄暗く、カーテンも閉まっていたので部屋の中は余計に暗かった。
雨の音が心地良いな…。
オレは眠気に襲われ、また夢を見た。
山本がオレの隣で寝ていた。
今度は、これは夢だって、自分でもわかっていて
だから、
どうせなら、
普段言えないような気持ちを言っちまおう。
自分から求めちまおう。
そう思った。
「…ん〜」
寝ている山本の上に乗る。
見下した山本の寝顔が愛しくて、オレはキスをした。
起きているのか、いないのか。
構わずに半開きだったその唇から舌を入れる。
いつもは山本がリードするこの行為。こんな状況だからこそ、オレからできる。
「んっ…!?」
「はっ」
山本がオレの顔をガッチリと掴んでキスを更に深く求めてきた。
「てめ、起きっ、〜っ!!」
話すらさせやしねぇ。
体が火照ってきて顔も真っ赤になるのを感じる。
山本のキスにクラクラしながら、リアルな夢だな…と思った。
いつの間にかキスは山本がリードしていてオレは逃げ腰。
長いキスは離れる唇と唇にもどかしいさを感じさせた。
「ははっ、今日はずいぶん積極的なのな」
山本がニヘラと笑う。
夢だとわかっていても、なかなか素直になれやしない。
「会いたかった」
「寂しかった」
「獄寺…」
「好きだ……」
山本が途切れ途切れに口に出す、8日間の気持ち。
今は言葉より、抱きしめられることで伝わってくる山本の温もりのほうが、山本の気持ちを伝えているように感じる。
このリアルさはどこからくるんだか…
こんな話を聞いたことがある。
夢に出てくる人は、夢を見たやつが、そいつのことを想って、夢の中に登場させちまうとか。
逆に夢に出てきたやつが、夢を見たやつのことを想って夢の中に自分を登場させちまうとか…。
山本のことを想ってるからこんな夢を見るのかもしれねぇ…。
それとも山本もオレのこと想って、夢を通して会いに来てくれてんのか…?
山本に抱き締められ、山本を感じ、会えなかった8日間の寂しさが込み上げて来た。
「オレも………山本のこと」
「……好きだ」
やっと出た言葉。
「ごくで「てめぇが居なくて落ち着けなかった。てめぇの声が聞けなくて寂しかった」
山本の背に手を回し、抱きしめ返す。
「なんかムカつくけど、オレん中じゃ、てめぇの存在なんて計り知れねぇほどでかくなってんだよ…!!」
幸い、顔が見えない状態で良かったと思った。