小説

□狐の嫁入り
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「あっ、雨・・・」
俺の部屋で本を読んでいた忍足が窓の外を見て呟く。
「あん?雨?晴れてるじゃねぇか」
俺も本から顔を上げ窓の外を見ると雨は本当に降っていた。
だけど外は雨の日のように薄暗くなく、明るく日が差していた。
「変な天気だな…晴れてるのに雨が降るなんて」
「狐の嫁入りやな」
窓へ近寄り外を眺める忍足が呟く。
「なんだ?狐の嫁入りって」
俺も窓に近寄って外を見ると雨粒に光が反射してキラキラと輝いていた。
「景ちゃん知らへんの?」
「あぁ・・・」
素直に認めるとニコッと笑う忍足。
「晴れの日に雨が降ることをな狐の嫁入りって言って、この時に井戸を覗きこむと狐の嫁入りが見えるっていう言い伝えがあるんや」
「ふ〜ん」
「そっ・・・それでな」
「あん?なんだ?」
「あの…な……やねん」
「だからなんだ?」
忍足の顔は何故か真っ赤。
俺が覗き込むとフイッと顔を背けられた。
「はっきり言えよ、侑士」
「・・・笑わん?」
「あぁ、笑わねぇよ」
「…あんな、狐の嫁入りの時になキッ…キスすると恋人とずっと一緒に居られるんやって」
最後の方は蚊が鳴くような声だったが俺には確りと聞こえた。
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