版権物
□高杉の代わり(2)
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気が付くと、桂はソファの上に横たわっていた。
「ここは……っ」
殴られた腹の痛みに顔をしかめながら、桂は起き上がろうとソファの背をつかんだ。
なんだか動きづらい。
そして、息苦しい。
ちらり、視線を下へ傾けると、見慣れた青色が目に入った。いつもの簡素な着物ではなく、女物の着物だ。着物は、濃い青に鮮やかな赤い色の紅葉が散っている。
「あ、ママ!ヅラ子が目を覚ましたわ」
聞き覚えのある声がする。できれば思い出したくない声だ。
「おう、起きやがったか、コノヤロー。
人を化け物呼ばわりしやがって。あんたにはまたこの店でわたしたちの尊さを学ばせてやるわよ」
桂が起き上がると、桂を殴った張本人が腕組みをして目の前に立っていた。
彼の周囲には、同じ格好をした、青髭のヤローがたくさんいる。
「西郷どの……。それだけは勘弁していただけないだろうか……」
「やだぁ、私のお客、横取りされちゃうじゃないのよぉ」
「ママったらぁ、いっつもヅラ子ばっかり連れてきてぇ。
ホントはヅラ子に気があるんじ
ゃあないのぉ?」
店のホステス(?)たちがオネェ声でわぁわぁと騒ぎ始めた。
しかし、西郷に桂がまた店で働くことに少し文句は言うものの、誰も面と向かって騒ぎ立てるものはいない。
皆、桂を歓迎してくれているのだ。
なかば、水面で騒ぐ鴨のように騒がしくなった野獣どもの声を、西郷が手を打って、鎮めた。
「ハイハイ、あんたたち、そろそろ開店時間なんだから、おしゃべりはやめて、各自準備なさい。さもないと、」
店のホステス(?)たちは、はぁ〜い、とやる気のない返事を返しつつも各自、一斉にテキパキと店の開店準備を始めた。
「さぁて、ヅラ子!」