第一楽章
□第五幕
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「は…ん…ん…」
どのくらいの間熱く深い口づけをしていたのだろう…
漸く離れた唇には熱が残り、見上げるアスランの瞳は苦悩に満ち溢れていた。
「…本当は逃げ出してきたんだ」
荒くなった息が落ち着くとアスランは私に覆いかぶさったまま優しく髪をすきながら額に唇を落とし、呟くように囁いた。
「ぇ??」
突然の告白に驚き目を見張る私に眉尻を下げ、困ったような顔をして
「…俺は俺の音楽に誇りを持っていた。だが、ある時から突然、自分の音楽が鳴り響かなくなった。」
「…」
黙ってアスランを見上げていると
「…そして気づいたんだ。足りなんだって。」
「きゃ…」
突然上体を起こし私の腕をとり、ベッドからひきあげ、
「俺がヴァイオリンを弾く理由、俺が音楽が好きなワケ…それは全部…」
私をすっぽり包み、強く抱きしめた。
「…」
私は高鳴る胸の鼓動を必死に抑えていた。
アスランが何を言おうとしているのか必至に理解しようとした。
でも抱きしめられている事の幸福感が勝っていて…
この腕を手放したくない…
気づけば背中に腕を回しギュッと強く抱きしめていた。
「…カガリ、カガリ、」
しがみつくように抱きつく私の髪にアスランは顔をうずめ
「カガリ、カガリ…」
幾度も幾度も消え入るような声で私の名前を呼んだ。
「あ…すら…ん」
名前を呼ばれる度に強くなっていく抱きしめる腕の力…
どちらからともなく、私もアスランもいつの間にかきつく抱き合っていた。
小刻みに震えていた身体中の震えが止まるとアスランはゆっくり私を離し、額にキスをしてベッドに腰かけさせた。
「俺がヴァイオリンを弾き始めたきっかけは君なんだ」
漸く落ち着きを取り戻したアスランが穏やかに微笑みながら私の隣に座り髪を撫でながら唇を寄せてきた。
「ん…わ…たし??」
軽く唇に触れるだけのキスを落とすと、綺麗な翡翠が至極嬉しそうに揺れ
「俺が弾く曲、全部に琥珀色の澄んだ瞳をキラキラ輝かせてこうせがむんだ」
「ぁ…///」
遠い昔の記憶が鮮明に思い出される。
アスランの奏でるヴァイオリンが大好きだった私はよく彼にせがんで色々な曲を弾いてもらっていた。
『もういっかい!!あしゅらん、もういっかい!!』
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