スピンオン!!(小説)

□第二話:ただ、破壊するだけだ
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ざぁざぁ

ざぁざぁ

ざぁざぁ


雨が降っている。

止まない雨。

「あの時」から止まない、雨。

シモンは立っていた。雨に濡れながら、虚ろな目でただ墓標である刀を見つめ。

シモンは墓の前に立っていた。

カミナの――アニキの墓の前。
どれほどの時間見つめていたのか、長い静寂――雨の音だけが五月蠅く響く中、シモンは口を開いて語り出した。


「アニキ…大グレン団はもう、ダメだよ。」

カミナの死後、大グレン団はキタンを新リーダーとして再出発していた。
当初こそ、キタンの指揮の元新たな大グレン団はうまくいっているように見えたが、小さなズレはたくさん生じた。そしてそのズレを纏めあげる技量は――悲しいながらキタンには無かった。

ズレがどんどん大きくなり、小さな諍いが絶えなくなった。

そして、ある日ヨーコが呟いてしまった一言。

「カミナがいれば…」

ヨーコとしては本当に思わず、悪気無く呟いてしまった一言。

だが、それがキタンには辛すぎた。誰もがそう思っていたこと。そしてキタン自身も、アイツのように、カミナのようになりたいと苦悩していた。だからこそ――辛すぎた。
決定的に自信を無くしたキタンは、粗野に、乱暴に、傲慢に、理不尽に振る舞うようになった。そしてメンバーは誰もがキタンはリーダーとしてふさわしくないと思った。だが、誰が代わりをやる?誰が出来る?そうして、大グレン団は徐々に、しかし確実に崩壊へと突き進んでいた。
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