スピンオン!!(小説)

□第二話:ただ、破壊するだけだ
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シモンは、それをただ眺め続けた。
誰も文句など言おうとしない。
みんなもはや諦めていた。

シモンをダイグレンから放り出せばいいという陰口を叩かれていることも、シモンは知っていた。

シモンも別にどうでも良かった。大グレン団の面々がどうなろうが知った事か。


だってアニキはもういない。


それなら俺が地上にいる意味もないじゃないか。

大グレン団なんか俺には関係ない。
だが、カミナはどう思うだろう。
自分の作った、自分の元に集った大グレン団。それが――何も成せずに崩壊してしまうなんて。


きっとアニキは悲しむ。


それは誰のせい?キタンのせい?ヨーコのせい?それとも他の誰かのせい?
違う。

「俺の…せいだ…。」

シモンはガクリと膝をつき、手のひらをつき、地面を見つめて呟いた。

俺があの時迷ったから。それを叩き直しにアニキが来なくちゃならなかったから。――俺がアニキを殺したから。

「俺がアニキを殺したからだ…俺のせいなんだ…」

どうしたら償える?どうしたら許される?どうしたら…

「どうしたらいいのか教えてよ、アニキ…」

アニキがいなきゃ何もできない。アニキがやれって言ってくれるから、アニキが俺を信じてくれるから、俺がアニキを信じられるから頑張れるのに。

と、雲に隙間が生じ、光が一筋その場に差した。
刀の鍔が光を反射してキラリと光り、シモンは顔を上げる。

「…そうか…」

シモンは立ち上がった。










「てめぇ勝手にどこにいってやがったぁ!?あぁ!?」

ガン、とキタンは壁を殴る。

「てめぇのいない間にガンメンが襲ってきたんだぞ!!」
「…別に、ラガンが動かないんだから意味ないじゃないか俺がいたって。」
「そういうことじゃあねぇだろうが!!」

心配したんだ、とキタンは続けるつもりだった。生来キタンは心優しい。いくら役に立たないとはいえそんなことは関係ない。シモンは仲間だ。ガンメンに襲われてしまったら…濡れた地盤に足を滑らせて崖下に落ちていたら…キタンはカミナが死ぬ以前からシモンのことを好ましく思っていた。弟がいたらこんなかんじかと。だからこそ、カミナの死後カミナしか求めないシモンに苛立っていたのだが、心配に変わりはなかった。

だが、その言葉を吐き出す前に目についたものがあった。
「お前…そりゃあ…」
シモンの握ったそれ。

それは、カミナの墓標としたカミナの愛刀だった。
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