天を突く!(小説2)
□ケモノの甘い夢
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広く深く、何処までも続く青色。
その下に広がる緑色の草原。
景色をじっくりと見るのは幾らやっても飽きる事などない。
ヴィラルがそんな感慨に耽っているとき、最愛の愛娘は草原の一部に広がる花畑に、父である自分にとってはその花よりずっと可愛らしく美しく映る表情をこれでもかと言わんばかりに輝かせて駆けて行くところだった。
「あんまり走ると転ぶわよ。」
妻はそんな娘の背中に声を掛けた後、ヴィラルに向かって苦笑いを浮かべながら肩を竦める。
平和な世界。幸せな日常。
手に入れるのは思っていたよりもずっと簡単だった。
望んでみればいいだけ。
望む事すらしなかった自分の何と愚かなことか。
妻の肩を優しく抱き、花畑に座り込む娘を眺めながら、元・人間掃討軍極東方面部隊長、ヴィラルはかつての自分に思いを馳せてみた。