◆平行世界◆

□突発
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『温度差』




その日、うちの学校の教師陣の飲み会があるのはゲンマさんからの情報で知ってた。

でもそれは、その日なるとが家に一人っきりになるから、戸締り気をつけろって言うための情報として知っていただけだった。自分にとっては何の関係もない事だと思っていた。

というか、俺が気にする理由もなかったし。

でもそれが自分の大きな勘違いだった事に気付いたのは、二人の男が店に入ってくるのを見た時だった。



割と背の高い、こげ茶の髪と銀の髪。

しかもその銀の髪が顔半分を覆うような大きなマスクをしているともなれば、それは間違い無く自分の良く知る二人なわけで。

最初は目を疑ったけれど、何度見ようとも覆しようのない現実がそこにはあった。

このバイトはちゃんと学校の許可を取ってやってるのだから、それで先生に見つかるのが困るようなわけじゃない。ましてやヤマト先生に至っては、自分でここでバイトしてるって教えたくらいだ。

でもまさか、よりにもよってアイツを連れてくるなんて…

「あ、ナルト!早速来てみたよ」

そう言ってヤマト先生はニッコリと笑ったけど、オレはちゃんと引きつらずに笑顔を見せられたか自信がない。

だってヤマト先生良いけど、その隣のアイツはハッキリ言ってお断りだ。

「バイトしてるとは聞いてたけど、ここだったんだ?」

そういって笑うマスク顔が何ともまぁイヤミったらしい事。

俺が嫌がってるって分かった上で、それを面白がってるとしか思えないような笑いだ。オレは何とか苛立ちを堪えて笑顔を保つ。

だってここは客商売。

綱手さんの手前、あからさまにカカシに嫌そうな顔を見せるわけにもいかない。笑顔で接客、は初日に綱手さんに叩き込まれた。

例えカカシだろうと、客は客なのだ。

「ほら、ナルト。二人におしぼり出しな!二人とも、何飲むんだい?」

綱手さんは俺に指示を出しながらカウンターで嬉しそうに二人を眺めてる。俺がここで働き出してからは初めてだけど、もしかして前にも来た事があったのかもしれない。

俺はおしぼりの温度を確認しながら順番に二人に差し出した。

渡す時にカカシの手が触れてちょっとドキリとした。別に変な動きをしたわけでもない…と思うけど、なぜか心臓が跳ねたのだ。

ただちょっと手が触れただけなのに。

「俺は適当にオススメで」

カカシはそんな俺の様子に気付きもしないのか、知らぬ振りか、至って平然と綱手さんにお酒を頼んでいる。自分ばっかり動揺してるなんて恥ずかしいというよりも、悔しい。

だからってカカシを動揺させてやろうなんて思わないけど。

「俺はウーロン茶で。明日も仕事ありますしね」

「ウーロン茶なら俺が入れるってばよ」

俺はカクテルは作れないけど、ソフトドリンクと、生ビールは入れ方を教えてもらってる。

それにヤマト先生に注いであげたかったし。

もちろんカカシに注ぐ気なんてこれっぽっちも無かった。

「お、先生にはお世話になってるからねぇ!どんどん注いでやりな!カカシもビール飲むかい?ナルトに注がせるよ!」

言わなくても良いのに、綱手さんが何か言ってる…。

嫌だ嫌だと思いながらも、まさかそれを顔にも態度にも出すわけにも行かず、聞かなかった振りも出来るわけもなく。

大体そんな事カカシに言ったら絶対に俺への嫌がらせの為に…

「今はあんまりビールって気分じゃないかな。」

そう言ってカカシが申し訳なさそうに笑った。

絶対に頼んでくると思ったのに、予想に反してカカシは俺への嫌がらせをしないらしい。それとも単に、先の飲み会で飲み飽きただけだろうか。

どちらにしても俺にとってラッキーな事には変わりない。

「じゃあ、ナルトに運ばせようかね!それでどうだい、ナルト」

どうって言われても、俺に拒否権はないだろうに。

というよりも、またしても綱手さんが何か余計な事を言ってしまっている。そんなに俺にカカシに何かしてあげさせたいのだろうか。

溜め息をつきたいのをぐっと堪えて、笑顔でヤマト先生にウーロン茶を渡す。

次に、言った通り綱手さんが作ったカクテルを渡される。

気持ち的には一気に下がったけれど、笑顔を消すわけにはいかない。

「どうぞ」

「どうも」

また、心臓が跳ねる。

手が触れるのなんて、手渡ししてるんだから在り得ないことじゃない。

おかしな事じゃないのに、なんでこんなにドキリとするのか、不思議で溜らない。

酔った手の熱さに違和感を感じているだけなのだろうか。

だけど、でも、ヤマト先生にはなんとも思わないのに。

「ナルト、枝豆くれる?」

「は、はい」

気付いたら綱手さんはヤマト先生と話しこんでいて、カカシはこれ幸いと(?)俺に沢山注文してくる。

しかも、俺が出せるものだけを狙って、だ。

おかげでヤマト先生と綱手さんは俺達そっちのけで何やら盛り上がっている。俺だってカカシの相手なんかよりも、そっちの輪に加わりたいってばよ。

だってやっぱり渡す度に、手が触れるのだ。

ドキドキしてしまうのだ。

俺の意思なんかお構いなしに…

→続きます(^_^;)
++++++++++

08.03.24

終わり切れなかった〜。突発ゆえに思いつきで書いております。

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