頂き物
□暖かいknitting・・・
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〜暖かいknitting…〜
「剣の稽古ですか?」
話し掛けられて、クレスは立ち止まった。
「ええ、まあ」
クレスの視線の先には、ジェイドが立っていた。
「いや〜、この寒い中、ご苦労様です」
「…と言いつつ、ジェイドさんは普段と同じ格好でも平気そうですね」
「おや、暖かそうな手袋ですね。貴方のお手製ですか?」
クレスの呆れを無視し、ジェイドはクレスの手元を見る。
毛糸で作られた手袋が、剣を持つ彼の手を暖めていた。
「(はぐらかされた…)毛糸が余ったとミントが言っていたので、習って作ったんですよ。…でも何で、僕が作ったって分かったんですか?」
クレスは不思議そうに首を傾げる。
ジェイドは片手で眼鏡を直しながら言う。
「その手袋…………編目が粗くて、なかなか個性的に歪んでいますから。どう考えても素人、しかも初心者が作ったものだと、誰でも分かるでしょう」
「…要するに、下手だと言いたいんですか」
クレスはがっかりした様にうなだれる。
「いえいえ、羨ましいと思っただけですよ」
にっこり笑いながら片手でクレスの手を取った。
「…暖かそうで」
「ジェイドさんも、毛糸の手袋が欲しいんですか?」
クレスが尋ねると、ジェイドは意味深に微笑む。
「私に限らず、この季節は色々な人が欲しがりますよ。…そう、色々な人…がね」
「…?」
そう言ったジェイドは、クレスの手を離す。
顔に疑問符を沢山浮かべて、クレスはジェイドを見つめたが、彼は微笑んだまま、その場を去ってしまった。
「稽古が邪魔されずに出来るといいですね」
…と言い残して。