頂き物

□お大事に。
1ページ/3ページ






いつものように宿屋で迎えた朝。一人また一人と、挨拶と共に朝食の席に着く。

ただいつもと違ったのは、最後に起きてきたのがアーチェではないことだった。





「クラースってば寝坊?朝ご飯が冷めちゃうよー!」

「・・・そっくりそのまま昨日のお前に返してやるよ」

「うっさい!」

「まあまあ二人共・・・」


再び勃発しそうになるチェスターとアーチェの喧嘩を、ミントが再び宥めに入る。

そんな彼らに苦笑しつつ、クレスは幾度となく階段を見上げていた。



―――ぎしっ


階段の軋む音に、不安げな顔が綻んだ。最上段からクラースがゆっくりと降りてくる。
起きたばかりなのか少々足がおぼつかない彼に、アーチェは自分のことは棚に上げて頬を膨らませた。


「遅い!・・・ん?」

目を細めてクラースを凝視したアーチェは、直ぐ様からかって云った。


「クラースってば顔赤いよ?やらしい夢でも見たんじゃなぁい?」



軽く間が開く。沈黙が食卓にのしかかった。



「あ、はは・・・冗談に決まってんじゃーん・・・」


飛んでくるのはゲンコツか本の角か、とアーチェを含め皆、身体をこわばらせた。

だが・・・何も起こらなかった。それはもう怖くなる程に。



「クラースさん・・・?」


勇気を奮ってクレスはクラースの前に立ち、目の前で手を左右に振った。

その時だった。
クラースがクレスに倒れ掛ってきたのは。


「う、わっと!?」

1、2歩後退してようやく踏みとどまったクレスは、自分に体重を掛けてくる彼に動揺し、異変に気付いた。
伝わる体温は普段よりも熱く、息使いも荒かった。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ