頂き物
□お大事に。
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いつものように宿屋で迎えた朝。一人また一人と、挨拶と共に朝食の席に着く。
ただいつもと違ったのは、最後に起きてきたのがアーチェではないことだった。
「クラースってば寝坊?朝ご飯が冷めちゃうよー!」
「・・・そっくりそのまま昨日のお前に返してやるよ」
「うっさい!」
「まあまあ二人共・・・」
再び勃発しそうになるチェスターとアーチェの喧嘩を、ミントが再び宥めに入る。
そんな彼らに苦笑しつつ、クレスは幾度となく階段を見上げていた。
―――ぎしっ
階段の軋む音に、不安げな顔が綻んだ。最上段からクラースがゆっくりと降りてくる。
起きたばかりなのか少々足がおぼつかない彼に、アーチェは自分のことは棚に上げて頬を膨らませた。
「遅い!・・・ん?」
目を細めてクラースを凝視したアーチェは、直ぐ様からかって云った。
「クラースってば顔赤いよ?やらしい夢でも見たんじゃなぁい?」
軽く間が開く。沈黙が食卓にのしかかった。
「あ、はは・・・冗談に決まってんじゃーん・・・」
飛んでくるのはゲンコツか本の角か、とアーチェを含め皆、身体をこわばらせた。
だが・・・何も起こらなかった。それはもう怖くなる程に。
「クラースさん・・・?」
勇気を奮ってクレスはクラースの前に立ち、目の前で手を左右に振った。
その時だった。
クラースがクレスに倒れ掛ってきたのは。
「う、わっと!?」
1、2歩後退してようやく踏みとどまったクレスは、自分に体重を掛けてくる彼に動揺し、異変に気付いた。
伝わる体温は普段よりも熱く、息使いも荒かった。