頂き物

□search for wind
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突然、誰かに髪を引っ張られ、ヴェイグは驚いて振り向く。




「…あ」

振り向くと、クレスが目を点にしながらヴェイグの三つ編みを掴んでいた。


「…?」



暫くお互いの顔を見つめ合っていたヴェイグとクレスだったが、クレスが手を緩めた事で青み掛かった三つ編みは、風に溶けるように流れた。

そのタイミングで、ヴェイグはやっと口を開く事が出来た。


「…クレス…?」



「ぇ…あ、ヴェイグ…」

クレスも戸惑いながらも、やっとそれだけ口に出せた。

ヴェイグが見ると、クレスの片腕には、数々の洗濯物が抱えられている。





「…あ、これ?…あっちでミント達を手伝って、洗濯物を乾してたんだけど…洗濯物が風に飛ばされちゃってね。拾いに来たんだ」

ヴェイグの視線に気付いてクレスが説明すると、
「…そうか」
ヴェイグも納得する。



「ヴェイグの髪が、洗濯物に見えて…つい掴んじゃった」

クレスが照れた様に笑う。

ヴェイグも釣られて微笑むと、自分の近くに、ハンカチが落ちているのに気が付いた。

薄く淡い水色。

「…これと間違ったのか?」

「あ、そうそう!!ありがとうヴェイグ」
クレスはハンカチを受け取って礼を言う。
「いや…大した事じゃない」

ヴェイグはそう言うと、クレスが持ちにくそうに洗濯物を抱えているのを見て、心配そうに覗き込む。

「……少し持つか?」

「本当!?…かなりの量が飛ばされちゃってさ。夢中で拾ってたら、こんなに多くなっちゃったんだ。助かるよ」


クレスは、にこっと笑いながらヴェイグに半分洗濯物を預けようとしたが、その手が途中で止まる。

「あ…でも良いの?今何かしてたんじゃ……。さっき、…かがみこんでただろ?」

ヴェイグの動きも止まり、暫く沈黙が続いたが、やがて「あぁ」とクレスから洗濯物の半分を預かった。


「…大した事じゃない。ちょっと、捜し物を…」

クレスがそれを聞き、慌てる。

「大変じゃないか!!何か失くしたのかい!?僕も一緒に捜すよ…!!」


そう言いながら、洗濯物を放り投げだしそうなクレスを、今度はヴェイグが慌てて止める。

「待て…!!………いいんだ。俺が捜してたのは…」





その時。
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