頂き物
□Sweet・soysaucepudding
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声を抑えてチェスターに視線だけを送る。
チェスターは意地悪く笑うと、
「いいじゃねーか。他の奴等にも見せ付けてやろうぜ。俺とクレスのラブラブっぷりをな♪」
クレスを更に力強く抱き締める。
クレスが慌てた。
「や、やめろって!!クラースさんから頼まれた買い物の荷物が落ちるだろ!!?;」
「落とせば良いだろ、そんなもん」
「何言ってんだよ!!怒るぞ!!!」
そう叫びながらクレスは荷物を片手に持ち、鳩尾に鉄拳を打ち込む…が。
「おっと」
咄嗟に肘を掴まれ、不発に終わってしまう。
「っ〜…!!!」
軽く余裕のある表情のチェスターを、クレスが睨み付けた。
「残念でしたー」
チェスターはからかうようにクレスの頭を軽くぽんぽん叩く。
すると、急にクレスは俯きながらボソリと、しかしチェスターにはっきりと聞こえるように呟いた。
「…僕、本気でチェスターの事嫌いになるよ?」
途端に、チェスターの動きが面白いようにぴたりと止まる。
それを見たクレスが厳しい表情を緩めて、くすくすと笑いだした。
「…チェスター、態度変わりすぎ。冗談に決まってるじゃないか」
「何だ…。脅かすなよ………。クレスにしちゃ、珍しく笑えねえ冗談だな」
チェスターも息を吐き、クレスに微笑みかけた。
…と、その時。
「…帰りが遅いと思いきや…こんな悪い虫に付き纏われてたのか」
「あ、クラースさん」
いつの間にか、クラースが腕を組みながら、明らかに不機嫌な様子で目の前に立っていた。
「悪い虫ってのは何だよ」
先程の発言を聞き逃さなかったチェスターが、クレスとクラースの間に入り込み、鋭い視線を目の前の男に送った。
「…てめえこそ、クレスに近づくんじゃねぇ」
「私はクレスにお使いを頼んでいたんだぞ。その買い物を妨害していたお前が偉そうに言えた事か?」
…険悪?
「二人とも…。こんな所で喧嘩なんて…;」
クレスが慌てて止めに入るも、睨み合いはまだまだ続いていた。
「クレスは俺のものだ。おっさんは引っ込んでろよ」
そう言いながらクレスの肩を抱き寄せるチェスター。
「年長者にその物言いは感心しないな…。それに、勝手にクレスを¨俺のもの¨にするのはどうかと思うが?…ほら見ろ、クレスだって困っているじゃないか」
話の矛先を自分に向けられて、クレスがきょとんとする。
「え、僕…っ!!?ぼ、僕は…」
「な!?クレスが困る筈ねーだろ!!余計な事聞くんじゃねぇよ!!!」
チェスターがクラースに食って掛かると、クレスは狼狽えながらも彼の服を引っ張ってそれを引き止めた。
「だから…やめろってチェスター!!クラースさんも、いい大人なんですから…僕らの反応見て楽しむのはやめて下さい!!!」
「…!!!クレス、私がいつお前の可愛い反応を見て楽しむなんて意地悪をしたと言うんだ…?」
クレスの言葉に、心外だとでも言うかの様にクラースは大袈裟によろめいた。
「(わざとらしい…)」
チェスターが密かに毒づいたが、クラースは気にする様子など微塵も無さげにクレスを見つめていた。
「クラースさん…」
クレスは少々呆れ気味に溜め息を吐いてから、何か言おうとしたが、それは何者かによって遮られた。