頂き物

□暖かいknitting・・・
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ジェイドが去った後、クレスが剣の素振りをしていると、足元に何か青い物体が転がってきた。

「ん…?」

クレスが覗き込むと、その物体は何やらもぞもぞと動きだし、いきなり大きな耳が飛び出した。
「みゅうぅぅぅ〜…」
物体は体を起こして、クレスの足に掴まって体を支える。

その姿に見覚えがあったクレスは叫ぶ。
「…ミュウ!?」
クレスが驚いていると、ミュウは顔を上げて、悲しげな声を出した。

「みゅぅ〜…クレスさん…、ボク、ご主人様に怒られて、おもいきり蹴飛ばされたですのー…」

ミュウのうるうるした瞳で見上げられ、あまりの愛らしさにクレスは思わず抱き上げてしまう。
「…可哀想に…!!それで向こうから転がってきたんだね!!あぁ…痛かっただろうに…」
クレスはミュウと目線を同じにすると、同じく瞳を潤ませて、その小さな体を抱き締めた。
「でも、大丈夫だよ。僕がルークに言ってあげるから。ミュウを蹴飛ばすのは良くないって」

「みゅうぅ…クレスさん…」


「…こんなトコまで転がってやがったかブタザル」
怒りを含んだ声とともに現われたのは、ルークだった。

「ルーク!駄目じゃないか!!こんなに小さいミュウを蹴飛ばしたりしちゃ…!!」

「クレス、ミュウを俺に渡してくれ」

ルークは、ミュウを守るように抱えているクレスへと手を差し出した。


「そういうわけにはいかないよ。可哀想に…ミュウは震えて脅えて泣いていたんだよ。それで僕に助けを求めて来たんだ…」

「そこまで大げさじゃないですの」

クレスに抱き締められているミュウは可愛らしくも、厳しめの突っ込みを入れた。
「そ、そうだっけ…?と、とにかく…ミュウをいじめるのは駄目だよ」
狼狽えつつも、ルークを咎める。

「んな事言ったって…そいつが悪いんだ…!!俺が気に入ってたマフラーを、火を吹いて焦がしちまったんだぜ?!」

「今日は寒いから、ご主人様が風邪をひかないように焚き火をしようとしただけですのー…」

申し訳なさそうに、もごもご言うミュウ。

「悪気があったわけじゃ無いんだよね?ルーク、許してあげてよ」

事情を聞いて、クレスは微笑む。
「わ、わかってるよ。ちょっと…頭に血が昇っただけだっつの」
ルークが渋々言いながら、焦げたマフラーを取り出し、ミュウの首に巻いてやった。
「ほら、お前こそ風邪ひくぞ。…何も身につけてないんだから、これでも巻いとけ」

珍しく優しく言われて、ミュウは嬉しそうな表情になった。
「みゅぅ〜…ご主人様、ありがとうですの♪」

「ばっ…///勘違いすんなよ!!風邪でもひかれたら面倒だから…だよ!!!」

照れながらも素直じゃないルークが可笑しくて、クレスは笑う。
「はは…良かったね、ミュウ。それじゃ、僕からもコレをあげるよ」
そう言って、クレスは自分の手袋を外して、ミュウに着けてやった。

「何だ?それ…毛糸の………?」
ルークが目を丸くしながらミュウの手を見つめる。
なかなか言葉が続かずに一時停止なルークに、クレスが言った。

「手袋、だよ…?」

「え」


ルークは完全に止まる。

「これ…手袋か?」

「うん。ミュウの手には大きすぎたかな」

「ぶかぶかですのー」

ミュウは大きめの手袋を落とさないように、自分の胸へと押しつけた。

「(毛糸の塊に見えた…;…大きすぎるとか、それ以前の話だろ…)」

ルークが、言ってはならない事を考えていると、クレスの腕の中でのミュウが嬉しそうな声をあげた。

「みゅぅ〜!!♪ぽかぽか、あったかいですの〜vV」

「は…」

「本当?良かったね」

「ご主人様、クレスさん、ありがとうございますですの♪」

ミュウの嬉しそうな声に、ルークもクレスも顔が綻ぶ。

「僕が作ったんだ。喜んで貰えて良かった…」
「え?お前が作ったのか??」
ルークが目を丸くする。
まさかクレスが編み物を!?
…という顔だ。

「やだな、僕だって剣ばかりなわけじゃないよ。…教わって、初めて作ったんだけどね」
苦笑しながらミュウの頭を撫でた。
「ふーん…?」

「けど、こんなに喜んで貰えるなんて…何か嬉しいな」
照れたように笑うクレスは、ミュウを見つめている。
「クレスさんの気持ちも、ご主人様の気持ちも、いっぱいいっぱいつまっているですの〜」
「ミントが言ってたよ。心を込めて編んだものは、その人の気持ちが伝わって暖かいって」
「心を込める…か…」
ルークは何を思ったか、クレスからミュウを奪い取って、腕のなかのミュウを指差した。
「なぁ、俺にも編んでくれねーか?」
「え?」
思いがけない言葉にクレスが聞き返す。
「駄目か?」
「いや、そんな事は」
即座に否定するも、何故ルークがそう言ったのか分からないクレスの頭は疑問符だらけだった。

「ご主人様、クレスさんの気持ち…欲しいですの?」
ミュウがルークを見上げて、ぶかぶかな毛糸のマフラーと手袋に包まれたまま首を傾げた。
「(何か…変な意味に聞こえるのは気のせいかな)」
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