アレティエ子作り部屋

□姫君はマザーグースを歌う。
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全裸を晒したティエリアは、同じく全裸で自分の隣に寝そべるアレルヤの胸に顔を埋めて呟いた。
「ベルベットは、いい子にしているだろうか…」
「大丈夫だよ、ティエ。ベルは元々いい子だし、あのマリナさんって人は保母さんみたいな優しい眼をしてたしね」
「君は、一国の皇女を何だと思ってるんだ?」
呆れた顔をしたティエリアが身を起こす。
「それだけではない。皇女と刹那の仲を邪魔する形になっているかも知れない」
「君は、マリナさんと刹那を結び付けたがっているみたいだね。どうしてそんなに、熱心になるの?」
「熱心になど…」
「なってるよ。僕には分かる。ティエリアの事だもの」
ティエリアが小首を傾げる。その動作で、ティエリアの腰を申し訳程度に覆っていた上掛けが落ちた。
あらわになったティエリアの下半身には、未熟げな男性器と女性器の両方が具わっていた。アレルヤはそれらを奇異な眼で見たりせず、愛しげにティエリアを抱き寄せる。
「僕は刹那の戦争根絶に向ける想いを信じている…が、彼がそれだけに囚われて、不幸になるのは嫌だ。そんな事はロックオンだって望んでいないだろう」
ティエリアの真紅の瞳が、哀しそうに細められる。
「彼女と共に居れば、少なくとも平和に生きられる」
「君は、刹那が大事なんだね」
「君も、刹那も、ライル・ディランディも…きっと僕の中では大切な存在だ。戦争根絶だけでない人生を送りたいなら…」
「多分、刹那はそうは思ってないんじゃないかな?」
アレルヤは、自分の事のように悲しげな顔をして言う。
「刹那も、戦争の被害者だから、余計に戦争根絶への想いは深いと思うよ。君や僕の気持ちだけでそれを止めてはいけないんじゃないかな」
「アレルヤ」
「でも、君に気遣われているのは、彼も気付いてて感謝しているのかもね」
ティエリアは誘われるままに、再びアレルヤの胸に顔を埋めた。伏せた長い睫毛が、逞しい胸元を掠める。
「君は、不思議な男だな。君にそう言われると、全て本当な気がする…」
「そう?」
紫の髪を、MSの操縦で荒れた手の指が撫でる。その手を、しなやかな白い指が撫でる。
「アレルヤ、君は僕に、自分の子供を産んだのだから完全に女になれとは言わなかったな」
「言って欲しいの?」
ティエリアはかぶりを振った。
「いや。…僕がこういう男女両性の体で作られたのも、何か意味がある事なんだろう。だから、もし君に請われたとしても、どちらかの性に決めたくない」
「それでいいと思うよ、ティエリア。僕はあるがままの君が好きなんだから、無理にどちらかの性に所属することはなくていいと思う」
「君らしい言い草だな」
ティエリアは微笑んで、アレルヤに接吻した。アレルヤの腕がティエリアの裸身を組み敷き、愛撫する。
自分はマリナ皇女のような完全な「女」ではない。体の60%は女性だが、残り40%は男性だ。アレルヤとの間にベルベットを産めたのは、奇跡に等しい。
アレルヤはそんなティエリアを受け入れて愛してくれる。それを嬉しいとティエリアは思う。
男として女として半ちくな存在ではない、男女どちらでもある存在として、ティエリアは生きている。
愛しい子供が居て、愛しい男が側に居て、時々一緒にマザーグースを歌うだけの余裕があれば、それだけでティエリア・アーデは生きてゆけるのだ。

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