ガンダム00部屋3。

□恋は異なもの乙なもの。
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「俺…刹那に惚れたらしいんだ」

ティエリアの眼鏡が思わずずれた。
(こういう時は笑ってはいけないんだろうな、やはり…)
ロックオンのあまりのうぶさに吹き出しそうになるのを堪えた。ロックオンが刹那を好きなことは周知の事実である。
(あんな熱い目で刹那を見てたのに…周りが気づかないとでも思っていたのだろうか…)
周囲にさり気なく気を配るのが上手いロックオンも、自分の恋心は隠せなかったというわけか。
「ロックオン、貴方に話がある」
「え?」
ロックオンが目を丸くした。
「それに気づいたのはいつだ」
「ついさっきだけど…」
ロックオンは自分の茶色の癖っ毛を乱暴にかき乱した。
(こ…こういう時はどう答えれば…)
「失礼する」
ティエリアは、ロックオンに聴こえないところで思い切り笑った。

「へーえ。それは意外だったねぇ」
「だろう?アレルヤ。君もそう思うだろう?」
事後のピロートークは、ロックオンの宣言のこと。
彼が自分の気持ちに気づいていなかったとは、ティエリアの夜の相方、アレルヤも思っても見なかったらしい。二人はくすくす笑いながら互いに突っつき始めた。
「けれど、初々しいじゃないか。初恋をした男の子のようでさ」
「彼は童貞じゃない」
「そんなこと関係ないよ…それにしても、どうしてロックオンが童貞じゃないって知ってるんだい?」
実は、アレルヤが気になりだした頃、ヴェーダで片っ端から恋愛沙汰に対するデータを調べ上げたのだ。もちろん、マイスターのそれも。
だが、それはアレルヤには言えなかった。
「…企業秘密だ」
「ティエリアは本当に何でもわかるんだねぇ」
「茶化す気か」
「いや。僕はティエリアのそういうところ、頼りになると思う」
アレルヤが優しく言うと、ティエリアの頬に血が昇った。
「おだてたって、無駄だからな」
ティエリアはアレルヤに顔を見られないように後ろを向く。アレルヤはまたくすくす笑った。
「まあ、さ。ロックオンにも可愛いところあるじゃない。今まで自分の気持ちに気づかなかった、なんてさ」
「…鈍すぎるんだ。彼だけが己の恋心を知らなかったなんて」
ティエリアは何故か苛々している。笑いの発作が治まってから、彼は今度は腹立たしさを覚えた。
どうして他人の色恋にこうも感情を振り回されなければならないのか。
それに、ティエリアには心にかかることがあった。
「どうしたの?ティエリア」
「ロックオンと刹那は合わない」
「そうかなあ、結構お似合いだと思うけど」
「刹那は扱いが難しい」
「無口だけど、優しくていい子じゃないか」
「刹那に恋しているような口ぶりだな」
「刹那はいい友達だよ。君こそロックオンを…」ばすっと、ティエリアはアレルヤに枕を投げつけた。
「もう貴様なんか知らん。一人で眠れ」
へそを曲げたティエリアは、毛布をかぶってアレルヤの反対側を向いて寝た。
本当は、
「悪かったよ、ティエリア」
と言ってくれさえしたら許してやるつもりでいたが、アレルヤはいつまでも懇願して来ない。だから、ティエリアはいつの間にか眠ってしまった。
(ティエリア…)
(ロックオン!)
これは夢なんだ。そうに違いない。
(どうして俺と刹那のことは認めてくれないんだ?)
(あ、アレルヤがいなかったら…)
ああ、認めてははいけないこと。
(貴方に惚れていたからだ!)
…ティエリアが目を覚ますと、窓から朝日が差していた。
「おはよう」
アレルヤが優しく微笑んだ。
ティエリアも、
「おはよう」
と、少々ばつが悪そうに答えた。あんなに意味のはっきりした夢を見るのは久しぶりだ。普段はもっと荒唐無稽な夢しか見ないからだ。
アレルヤがいなかったら、刹那とロックオンを取り合っていただろうか。それはごめんだ。
ロックオンは、結局刹那を選んだだろうから。ヴェーダに聞かなくても予想はつく。自分だって、アレルヤに恋をした。この、深緑色の髪のよく似合う青年に。
どうしてなのかはわからない。恋は思案の外だから。
ロックオンは好きだ。
だが、今はアレルヤが愛しくて…どうしようもなく憎らしくて。でもやはり愛しくて。
「アレルヤ…君がいて良かったよ」
「どうしたんだい?!ティエリア!」
「うるさい!…で、君はどうなんだ?」
「僕も、ティエリアがいて良かった…」
ベッドの上にスレンダーな脚をさらけ出して、ティエリアはアレルヤにキスを仕掛けた。アレルヤはすぐさまそれに応えた。
彼らは互いに知り尽くした唇を味わった。

H23.04.11

後書き
Tomokoさんのアレティエでニル刹なお話です。アレティエが当世の若い男女(笑)っぽくて可愛いです!
Tomokoさんいつもありがとうございます!(特に今回は、アレティエ読みたいと思ってた時なので)

Tomokoさんのあとがき
例によって例のごとく、ティエリアの二人称に自信が持てません…



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