ガンダム00部屋3。

□愛することでしか、生きられない。
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ころりと寝返りをうった刹那の横には誰もいなかった。…確か、ロックオンが隣に眠っていたはずだが。
違和感を感じて、刹那が起きた。
この頃、アリーの夢を見なくなった。ロックオンが気持ちのいい睡眠薬を注入したように。刹那がロックオンを愛し始めている証拠かもしれない。
(アリーか…)
何だか久しぶりに思い出したような気がする。
刹那にアリーを会わせたのが神なら、ロックオンに巡り合わせたのも神なのか。そもそも神は存在するのか。
アリーは、神を信じていないのだろう、と刹那は思った。
そしたら自分はどうなのだろう。神はいないと言いながら、確かに神の手を感じることがある。
昔のアラビアでは宿命論が信じられていたらしい。刹那はあまり信じていなかったが、しかし、これはあらかじめ決まっていたこととしか思えない時がある。
たとえば、ロックオンといる時…。
収まるべきところに収まった安心感がある。ロックオンと情交した後は、まるで幼子のようにぐっすり眠ることができた。
このままでは、ロックオンに依存してしまうかもしれない。だが、それも良いではないか、と刹那は考えるようになった。刹那もロックオンに何かを与えることができると、今なら自信を持って言えるのだから。
それにしても、ロックオンはどこに行ったのだろう…探しに行こうとしたその時だった。
「起こしたか?」
ロックオンの低い、よく通る声。セクシーだと思うのは、刹那だけだろうか。
刹那は骨がらみ、ロックオンに参っている。だが、男としての矜持が、彼に対して好意を素直に表せない。
ロックオンは、気づいているのかいないのか、飄々とした態度で刹那に接している。それが刹那には嬉しい。多少好色なところはあるが、真面目で情け深い男なのだ。
刹那は、どこに行ってたのかロックオンに聞こうとしたが、相手が先に口を開いた。
「コーヒーがないんでミルクだ。いいか?」
「飲めれば何だっていい」
「味気ない答えだな」
ロックオンは内容とは裏腹に、愛しさに溢れた声で言った。
「まあいい。ミルクは嫌いじゃないだろ?」
「…ああ」
「今度おごってやるよ」
「…期待しないで待ってる」
温かいミルクは、そのままロックオンの性格を象徴しているかのようだった。
やはり、この男は優しい。
ロックオンの優しさと男らしさ、どれほど刹那を救ってくれたことだろう。
これが愛されているということか。
鼻の奥がつんとなった。自分には生涯縁がないだろうと思っていた安らかな気持ち。自分は守られているのだという気持ち。それを教えてくれたのはロックオンだった。
彼の心に恋心を植え付けた。その小さな小さな愛の苗は、自分が育てなければならぬのだ。できれば、ロックオンも一緒に。
ロックオンがいなくなっても、愛し続ける。自分を、他人を…世界を。
(良かった…ロックオンに会えて、本当に良かった)
刹那はそのことに感謝した。もう恨むこともない。アリーでさえも。自分は、仲間達と共にこの世界を愛することができる。
信仰と希望と、愛。最後に残るのは愛だと、謳う宗教もある。
刹那は宗教とは無縁だったが、どこかで読んだことがある。
愛することによってしか、生きることができない。
愛されることは確かに幸せなことだろう。しかし、愛することはそれ以上に幸せなことだ。
しかも、自分はロックオンを愛し、愛されている。
これもガンダムのおかげだ。
ガンダムが彼らを結びつけた。
刹那はガンダムを神聖視すること夥しい。
(俺は、ガンダムになる。愛する者の為に戦う)
世界が平和になるように、これまで何千年と祈られていたように、刹那も祈る。
刹那は微笑みを浮かべていただろう。
(ロックオン、愛している)
だが、刹那がそれを口にすることはなかった。代わりに、
「お前はお人好しだな」と言った。
「えーと…それは褒められたと思っていいのかな」
「想像に任せる」
ロックオンも嬉しそうな顔をした。何も言わないが、刹那の微笑みに感化されたのだろう。
刹那は、温かいミルクを一口一口、味わいながら丁寧に飲んだ。それを眺めていたロックオンは、吹き出しながら言った。
「刹那…お前、ミルク相当好きだろ」
「どうしてだ」
「大切に飲んでる感じがする」
刹那は、ロックオンの鈍さに驚いた。ロックオンが用意してくれたミルクだから、大事に飲んでいたのに。
刹那にとってはどうもロックオンは別格のようだ。多分、ロックオンにとって刹那が特別なように。
お互いとお互いがしっかり結びついている。
ミルクを飲み終わった二人は、やがてシーツに縺れ込んだ。

H23.04.22

後書き
Tomokoさんのニル刹「愛シリーズ」、二人の愛が素晴らしい方向に向かってる事が素晴らしいです!
Tomokoさん本当にありがとう!

Tomokoさんのあとがき
この後のことは内緒です。ムフフ( ´艸`)



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