ガンダムOO部屋

□Tin Waltz
1ページ/1ページ

日本にある王留美の別荘の一つは、ガンダムマイスター達の秘密の休養所であったが、その別荘に程近い小川で蛍狩りが出来ると知ったロックオンが「蛍狩りに行きたい」と言い出した時、同行したのはアレルヤだけで、ロックオンの秘密の恋人である刹那もアレルヤの恋人であるティエリアも同行しようとはしなかった。
「せっかくの休養なんだから、もっと遊べば良いのに…」
「仕方ないさ。あいつらは遊び方が下手なんだ。だから俺達が率先して遊び方を教えてやらないとな」
そんな会話を交わしつつ、アレルヤとロックオンは小川へ続く道を歩く。夏とは言え既に暗い小道を草を掻き分け進むと、小川の淵に出る。青白い光がすう…と尾を描いて飛んだ。
「うわあ…」
水面に上下する光の玉の群れが、二人の視線を奪った。光、また光が飛んでは降り、また競い合うように飛んで行く。
ロックオンが手を伸ばし、スナイパーの反射で蛍を一匹手の内に捕らえた。
「どうするんですか、それ」
「んー、刹那に見せてやろうかと…」
「じゃ、虫籠を作りましょうか」
「出来るのか?お前」
「ええ。ここいら辺は松が多いから」
松葉を何本か取ったアレルヤは、広葉樹からも二枚葉っぱを取って上下にし、それに松葉を刺して虫籠を作ってゆく。いつ何処で習ったかも思い出せない微かな記憶をたどって籠を完成させると、ロックオンの手中から籠の中に蛍を移す。アレルヤが抱えた籠の中、蛍は光を明滅させていた。

「ほら、こんな綺麗なのがうじゃうじゃ居たんだぜ」
別荘に戻り、籠を見せると刹那の眼がまるっと広くなった。後ろからティエリアも覗いている。
明滅する蛍の光を見ていた二人だったが、刹那が口を開く。
「逃がしてやったほうが良い。これでは番いの相手を探せない」
「ああ。お前らに見せてやれればもう充分だ」
ロックオンが松葉を抜いて籠を解体すると、蛍がつい、と飛んで逃げ去る。その方向をどこか名残惜しげに見ているティエリアに、アレルヤは囁いた。
「見に行く?まだ蛍はいっぱい居る筈だよ」
「別に、興味はない」
「でも綺麗なものは好きだよね?」
にっこりと笑うアレルヤに険しい顔を向けるティエリアだったが、否定の言葉は出て来なかった。
「よし、決めた!これから四人で蛍狩りな」
「は!?」
「じゃあ、飲み物だけ持って行きましょうか」
「おい…!」
アレルヤの肩を掴んだティエリアだったが、逆にアレルヤに手を取られてしまう。
「行こうよ。ティエリア。すごく綺麗なんだよ?僕も君に見せたいよ」
「…」
「刹那、行くよな!?」
「…行く」
「よーしよし。じゃあ、出るぞ」
縁側に用意されたペットボトルを持ってロックオンと刹那が歩き始める。ティエリアは大きい溜息をついたが、続いて歩き始め、アレルヤを振り返る。
「早く来い。置いて行くぞ」
「今、行くよ」
アレルヤは笑って追い付き、ティエリアの手を握った。少し汗ばむ手を、ティエリアは逡巡の後握り返した。
夜の林の上を、蛍が二匹絡み合い飛んで行った。

END
H20.09.27

もう季節外れですが、マイスターズ蛍狩りです。




[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ