ガンダムOO部屋

□神は奪い給う。
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ロックオンの訃報が届いて…どのぐらいになるだろう。
ティエリアはかぼちゃのスープをすすりながら、妙なことを言った。
「ねえ、アレルヤ。神って本当にいるのかな」
眼鏡の奥は無表情だった。
「神がいるかいないか、想像力の中にあるか、と言えば、僕の答えは、イエスだ」
「人間の想像力は、神を創造したのだろうか…」「そうだと思う。問題は、人間の想像力が神を凌駕したところだよ。人間が、自らの支配権を神に捧げてしまったんだ」
「僕は…僕の神がロックオンを殺したのなら、僕は僕を赦せない」
「ティエリア…」
「僕のせいだ…」
ティエリアは声を殺して泣いた。
「どうして、ロックオンが死んで、僕が生きているんだろう」
ティエリアは、アレルヤの肩に顔を押しつけた。「アレルヤ・ハプティズム。僕は君まで失ったらと思うと怖い」
神は与え給い、神は奪い給う…ティエリアは歌うように言った。
「聖書のヨブ記の言葉さ。…ヨブは本当に納得していたのかな」
「さあ…」
「僕はロックオンを奪ったのが神なら…そんな神はいない方がいいと思う。そんなものは、悪魔というにふさわしい」
それは何世紀も前から、多くの者が涙と一緒にこぼしたセリフだった。
「僕は…そんな神ではなく、別の神を信じてる。僕の神はティエリア・アーデ、君の顔をしている」
ティエリアはかっと赤くなった。
「戯れ言はよせ!アレルヤ」
「あだやおろそかに言っているんじゃない!僕は本気だ」
ティエリアは、一瞬絶句し…滂沱の涙を流した。
「君だって…君は僕の神だ。君まで失ったら…僕は生きていけない…」
「だめだよ」
アレルヤが穏やかになだめた。
「僕が死んでも…君は生き続けなきゃだめだ」
「君も僕を置いていくのか?」
「行かない」
アレルヤは優しく、だがきっぱりと言い切った。「僕は、君のそばから離れない」
「アレルヤ…」
ティエリアは眠い、と言った。
「わかった」
ベッドメーキングは済んでるよ、とアレルヤは言った。
ロックオンは死んだ。でも、僕達は生き続ける。僕達は、ロックオンのことを思い出し…そのたびに天国での彼にそっと話しかける。自分達にしか通じない言葉で。
(そう簡単に思い出にはしないよ。ロックオン)夜になったら、彼はアレルヤ達に会いに来る。
ティエリアは眠っただろうか。せめて、ティエリアの夢の中では優しいロックオンのままでいてくれ…そう祈らずにはいられなかった。

H21.10.31

Tomokoさんの後書き:
私の書いたアレルヤとティエリアの話です。神様のことは、ティエリアは信じないかもしれませんが、私は信じています。

クリスチャンであるTomokoさんが見たアレティエと、二人の神の実存です。
Tomokoさんは萩尾望都さんの「残酷な神が支配する」からこの話の着想を得られたそうです。
ありがとうございました!



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