ガンダムOO部屋

□続・神は奪い給う。
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死んだのがアレルヤでなくて良かった…。
ティエリアは床につく時、必ず決まってそう思う。そして、そんな自分を責めるのだ。
だからといって、ロックオンが死んでいいという理由にはならないじゃないか。
この世は不条理だ。ティエリアは思う。特に人間は…不条理だ。
考えてはいけないこと、思ってはいけないことを思ってしまう。
ロックオン…僕は自分を責めるしかないのだろうか…。
「…ア、ティエリア…」
この声はロックオンの声。聞き慣れた優しい声。
「ティエリア…」
「ロックオン…」
「何しけた顔してんだよ」
「だって…貴方が僕のせいで亡くなったりしたから…」
「だから、責任を感じているというのか?ティエリア・アーデらしくもない」
「ロックオン…今の貴方は、少し、軽過ぎる…」
「まあな。そうでないと、おまえが心配すると思ってな」
「…充分心配だ」
「ティエリア、おまえは優し過ぎる…俺は…おまえの優しさに漬け込む気はない」
「僕が…優しいって?!」
意外なことを言われ、ティエリアはうろたえた。頭にかっと血が昇る。
「貴方は、僕の気持ちがわかってるんだろう?」
「まあね」
「僕はアレルヤが死ななくて良かったと思っているんだぞ。つまりそれは死んだのがロックオンでまだ良かったと思っている証なんだ」
ロックオンは顎に手を当て、うーんと唸った。
「俺には難しいことはわからんが…愛する人が生きていることを悦ぶのが、そんなに悪いことかねぇ」
「え…?」
「おまえさんは、アレルヤを愛しているんだよ」
「なっ…まあ、それはその…」
「図星だろ」
「僕の神はアレルヤ・ハプティズムだ。だから、僕は…貴方に…すまないと…」
「いいんだ。自分の気持ちに正直になれよ。アレルヤが神なら神でいい。俺のことで…自分を責めるな」
「しかし、それでは、あんまり貴方が気の毒だ」
「もっと自分勝手になってもいいんだぞ。俺にも…恋してる奴がいてな。それはもちろんおまえじゃない。取り敢えず、それでおあいこだろ?」
「…その相手とは、刹那・F・セイエイのことか?」
「なんだ、わかってんじゃないか」
しかし、刹那とロックオンを結果的に引き裂いたのは僕だ。ティエリアの顔が憂いを帯びた。
「そんな顔すんな。俺はまた刹那に会うんだから。想いは死を超えるんだ」
想いは死を超える…。
いつしか、ティエリアの頬に幾筋もの涙が流れた。
「それに、俺達は何度も生まれ変わり、死に変わる。いつだって、大切な物はすぐ近くにある。おまえには、大事にしなければならない奴が目の前にいるじゃないか?」
「わ…私の大切な者は、アレルヤ・ハプティズムだ…」
「よーし、よくできたな。上出来だ」
「でも、貴方のことは忘れたくない」
「それでいい」
サーッとガラス戸が開いて、新緑の爽やかな風が入ってくる。
(今は…十月のはずなのに…)
「アレルヤを愛することと、俺の死を悼んでくれることとは別問題だ。アレルヤを愛する自分を責めることはない。愛することに…脅えるな…ティエリア…ティエリア・アーデ…」
ロックオンの体が、透けて見える。陽光に溶け去ろうとしている。
「ロックオン…ロックオーン!」
「…ア、ティエ…」
ロックオンとは違う声に呼ばれて、目が覚めた。「ロックオンが夢に出てきた…」
アレルヤの姿を見て、ほっとしたティエリアが、涙を流しながら彼に抱きついた。
「…怖かったのかい?」
「いや、違う。…夢の中でも、彼は優しかった…そして、『愛することに脅えるな』と…」
ティエリアの話を聞いているアレルヤは、限りなく澄んだ目をしていた。「ティエリア…僕は…少しロックオンに嫉妬していた。そして今も…」
ティエリアは柳眉を逆立てた。
「君はそんなことを言うのか!アレルヤ・ハプティズム!ロックオンを本気で愛しているなら、こんなに悩みはしない!僕の愛しているのは…」
「僕は君を愛しているよ」
「…人の言うことは最後まで聞け…」
「ごめん。言いたくなった」
愛してる…。
ロックオンも、刹那に対してそう思っていたのだろうか。
神は…思うさま人の運命を振り回し、それでも最後には物事をあるべきところにおさめる。
ティエリアは、アレルヤの腕の中にすっぽりと入った。
刹那、君は今、誰を思っている…?
ロックオンであるといい。でないと、彼が可哀想過ぎる。
こんなことを思うのは、いい気なものであるかもしれない。けれど、僕は彼によっているべき場所を見つけたから…。
それは、アレルヤと生きるこの世界。

H21.11.02
Tomokoさんの後書き。
アレティエ続編書きました!前の話では、ちょっと語れなかったこともありましたしね。
前のアレティエ話に書いたかぼちゃスープは、確かにハロウィンを意識しました!

続編寄稿ありがとうございました!
二人称とか違うっぽい所があったので、少々手直しして掲載した事をお許し願います。
ハロウィン小説二本立て、重ねがさねありがとうございました!



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