ガンダムOO部屋

□まごころを、君に。
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「ジーン1…」
「駄目だ」
「ここまで来て、殺生な事を言うな。お前は」
クラウス・グラードはベッドの上で、正確にはベッドの上に押し倒したジーン1ことライル・ディランディの上で苦笑した。確かに、押し倒された状態で「駄目だ」なんて拒絶する相手なんて、クラウスの乏しい性体験の相手にはちょっといなかった。
ライルはと言えば、秀逸な色男面だがしれっとした顔で「大体よお」と厳しい言葉を続ける。
「お前、この一週間ろくに風呂入ってねえだろ。臭くって敵わねえよ。そんな相手と同衾なんざ御免だね」
いちいち人をいらつかせる言葉を選んで口にするのがライルという男だ。しかし、そんな斜に構えた所も好もしいと考えてしまうクラウスは、ライル以上に問題ありな人格をしている。
まあ、それも恋故に、と言い切る若さが有ればこそだ。
「分かった、一風呂浴びて来る」
「そうしろ、そうしろ」
ひらひら手を振るライルに朴訥な笑みを向けたクラウスは、素早くライルの唇に自分のそれを押し当てた。
技巧も何もない、素朴なこの男らしいキスに、ライルが眩しそうな眼をする。
「…早く、風呂入っちまえ」
口から出るのは、そんな可愛いげのない乾いた言葉だけだけど。

隣の風呂場で水音がするのを、ライルはくすぐったく聞いていた。あの堅物の身体を水が撫でていると思うとときめくような気がする…が、本当に気がするだけだった。
ライルは急激に眠気に襲われていた。カタロンの旧式MSでアロウズの偵察機を落とした後は、仲間をこの秘密基地に落ち延びさせるまでしんがりを務めて奮戦したのだ。
「疲れて当然だよなぁ…」
欠伸をして、もそもそ粗悪品のブランケットに潜り込んだライルは、クラウスに夜を許す約束をしたのも忘れて熟睡してしまった。

「あんまりと言えばあんまりだな、ジーン1?」
クラウスは苦笑した。まあ、予想通りのライルの行動だった。ライルが「待っていた…」なんて海色の綺麗な瞳をうるうるさせながら迫って来たら、ぐっと来るけど、やはり違和感漂う光景だ。
ライルという男は、カタロンの皆が殺気立って10日でも風呂に入らないでいる時でも、飄々とした顔でゆったり風呂を浴びてリラックス出来てしまう男なのだ。
こちらが迫れば逃げる癖に、離れるとなにげに擦り寄って来る辺り、昔見たフィルム・ノワールの悪女めいてもいる。
「さしずめ私は、悪女に眩惑されるチンピラかな?」
ライルという奔放なイメージの男を想う事に腹をくくったクラウスは、寝入っているライルの額と唇に、兄が弟にするようなキスをして、枕元に小さな包みを置いた。
「おやすみ、ジーン1。今日はご苦労だったな…。それから…誕生日おめでとう」
クラウスが笑って出て行くのと引き替えるように、いきなりライルが両目をバッチリ開けた。ちなみに、目覚めかけた時に聞いた「さしずめ私は…」なんて自嘲気味の言葉も、バッチリ聞いていた。
「あの野郎、誰が悪女だよ!」
ぶすくれて枕を殴ると、包みが転がる。ライルは慌てて包みを受け止めると、しみじみと手の内のそれに見入る。粗末なクラフト紙と紙テープの包みだが、紙テープが深い海色をしていて、クラフト紙の茶色はライルの髪の色と呼応している辺りに、クラウスの趣味が窺えた。
「どれどれ、あいつの贈り物を堪能させて貰おうか」
喜色を湛えた陽気な声でそう言って包みを開けたライルは、次の瞬間、包みの中の物を壁に投げ付けて悪態をついた。
「あの阿保!もう、絶対にやらせてやんねえ!」
床に転がったのは、この時代にも細々と伝えられて来た禁煙パ○ポであった。

H22.03.01

ニール&ライル、プレ誕生日おめでとう!
03.03はディランディデー!!!
クラライは普段書く機会が無いのですが、ゆーちゅーぶで劇場版ライルのぷりけつを見たら、ライル受書きたくなって…(笑)。
楽しかった!


 

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