アレティエ子作り部屋

□はじまり。
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「少し体調が悪いようだ。朝も起き辛いし、食べ物を前にするとむかつく」
二人だけの夜の時間、ティエリアが自分の胸に顔を埋めて言うのを聞き咎めたアレルヤは聞き返した。
「具合悪いの?」
「少しだけだ。ヴァーチェに乗るのに支障はない」
「まさか、妊娠したとか…痛っ」
ぺしっと頭を叩かれて、アレルヤは身を竦めた。ティエリアは不機嫌な顔で見上げてくる。
「君は馬鹿か。男同士でどうやって子作りする気だ?」
「えー、でも、子供出来ても不思議じゃない位してるし…痛い!」
べちっと叩かれて、またアレルヤが身を竦めた。
「冗談抜きで、大丈夫?」
「この位平気だ」
ただ愚痴って見たかっただけなのだろう。アレルヤは肩の力を抜いてティエリアを抱き寄せた。
「…君と僕の赤ちゃんなら、君に似たほうがいいな。きっと可愛いよ」
「止せ。冗談じゃない」
「赤ちゃんって、可愛いんだよ?つぶらな眼をしてて、肌なんかベルベットみたいにつるつるふかふかで」
熱心に言うアレルヤに呆れた視線を向け、ティエリアが問い掛ける。
「何故、そんなに俺が子供を産む事に固執する?」
「他の誰かと子供作りたいなんて思わないよ。ティエリアとだから赤ちゃんが出来ても良いって思ったんだ」
「ふん…」
優しいキスがこめかみに落ちる。ティエリアは眼を閉じ、アレルヤの愛撫に身を任せた。

半壊したナドレのコクピットにうずくまりながら、ティエリアは死を思った。これで仲間の元へ行ける。死は安らかな筈だ。
「…!」
不意に、ぴくりと腹部がうごめいた。不随意なその動きに反射的に手をやると、パイロットスーツ越しにも確かな温みがあった。
ティエリアは、痛めつけられた自らの体の中にアレルヤの分身の存在を確信した。

四年後。
再会の挨拶を済ませて向かい合った二人だったが、ティエリアはすぐに退出してしまう。アレルヤは大人びた顔に訝る表情を浮かべてしばらくティエリアを待った。やがて、幼児の声とそれを宥めるティエリアの声が聞こえて来る。ドアが開き、三歳位の幼女を抱えたティエリアが部屋に入っ来た。
「待たせたな、アレルヤ」
「ティエリア…その娘は?」
「ベルベット・アーデ。君と…僕の娘だ」
はにかみながら、ティエリアが告げる。アレルヤは眼を見開いて何も言えずにいた。ティエリアが娘に言い聞かせる声がする。
「ベルベット、父様に挨拶を」
「…とうさま?とうさまなの?かあさま」
「そうだ。父様だ、ベルベット」
小さなベルベット・アーデがアレルヤを振り向く。ティエリアそっくりの幼い娘が、自分と同じ金の右眼と銀の左眼をしている事に気付いたアレルヤは、胸に熱いものが込み上げて来るのを感じた。
「おいで、ベルベット。僕の…大切な娘」
「とうさま、とうさま」
ティエリアの腕から懸命に手を伸ばして来るベルベットを抱き取って、アレルヤは娘の紫の髪に頬擦りした。自然に涙が溢れて来る。
「何て可愛いんだ。この娘がこんなに大きくなるまで成長を見届けられなかったなんて、自分が悔やまれるよ」
「全くだ。早く帰って来れば良いものを」
「うん…うん」
頷くアレルヤの濡れた頬に、小さな手が添えられた。
「とうさま、ないてるの?」
「泣いてないよ。もう、悲しい事はこれっぽっちも無いんだ」
涙を拭ったアレルヤは、ティエリアとベルベットに等分に微笑みかけて言った。
「これからは、ずっと一緒だ」

H20.09.27

そんな訳で、アレティエ愛娘爆誕です(笑)。




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