アレティエ子作り部屋

□れっつSAKAGO体操!
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遊び疲れた幼いベルベット・アーデが父親と同じ金銀の眼を閉じ、母親である自分と同じヴァイオレットの髪を枕に散らしてくーくーと気持ち良さそうに寝入っているのに優しく上掛けを掛けてやりながら、ティエリアは幸せで胸いっぱいになるという気持ちを味わっていた。
子供の成長に対するダーウィニズム的な興味はもちろんだが、血を分けた我が子と思うとこの子が無事に成長できますようにと居もしない神に祈りたくなる。
アレルヤと自分の子供だと思えば尚更。
セラヴィーのセッティングや筋トレ等で心地よく疲労した体が、柔らかに弛緩してゆく気がする。
「よく眠ってるね。可愛い寝顔」
アレルヤは枕元に腰掛けて、愛娘の髪を優しく撫でている。冷蔵庫には彼手製のオレンジババロアが、愛娘と恋人に食べさせる為にしまわれていた。
「本当に、ベルは世界で一番可愛い子だよね」
「君はいつもそれだな」
「だって、可愛いもの」
娘にめろめろな若い父親は、恋人を招き寄せて肩を抱いた。
「ありがとう、ティエ。僕にこんな可愛い娘を与えてくれて」
甘い口付けが髪に落とされる。くすぐったそうに笑ったティエリアは、恋人をからかうように言葉を口にした。
「産むのは大変だったのだぞ?お腹は大きくなるし、初めての出産だから勝手が分からなくて…。一時は逆子になったしな」
「え、逆子だったの?大丈夫?」
「大丈夫だ。逆子は直せたからこうして無事に産まれたんだ。慌てるな、馬鹿」
慌てるアレルヤの額をぺし、と叩いて、ティエリアは笑った。
「でも、逆子ってどうやって直せたの?自然には直らないよね?」
「逆子体操と言うのがある」
「逆子体操?」
「結構きついのだが、こうやって腰を上げて…」
アレルヤの腕から離れたティエリアは床に這い、頭を下げて腰だけ高く上げる姿勢を取る。ティエリアにそんなつもりはないだろうが、自分を受け入れる時のエロチックな姿勢に似ていてアレルヤは鼻血を吹きそうになった。
「15分くらいこの姿勢でいて、その後は胎児の頭が上に来るように横になって…−−−!」
ごろり、と横になろうとしたティエリアが顔を歪め、左足を両手で押さえる。
「ティエリア!?」
「あ、足がつった…」
疲労していた体は、久しぶりのきつい体勢のせいで引き攣ってしまったらしい。アレルヤは床に転がるティエリアを抱き起こそうと覆い被さる。
その瞬間、部屋のドアが開いた。
「無用心だな。鍵が開いて…」
入ろうとした刹那の眼に映ったのは、床に横たわるティエリアに覆い被さるアレルヤの姿だった。たっぷり二十秒間黙っていた刹那は、凍り付いている恋人同士に言った。
「…済まない。邪魔をした」
「えっ、ちょ、刹那…!?」
ドアは再び閉まり、凍った二人が眠る娘と共においてきぼりにされた。

刹那はトレミーのキャットウォークを移動していた。仲間二人が昼間から盛って(笑)いたのを見たのは些かショックだった。
「もうすぐブリーフィングの時間だが…あいつらは抜きで進めるか」
多大な誤解をしているとも知らず、刹那はブリーフィングルームへ移動して行った。

「馬鹿者−−−!刹那が誤解したじゃないか−−−!」
「いたた…ティエ、勘弁してよ」
ティエリアの拳でぼてくり回されたアレルヤが情けない声を上げる。
足がつった事などどこかに行ってしまったティエリアは、激怒に任せてアレルヤの頬を掴み、にゅい〜んと伸ばす。
「いひゃいいひゃい〜」
「自業自得だ。この馬鹿…!」
きりきりと綺麗な眉を吊り上げていたティエリアだったが、「うう〜ん…」という迷惑そうな娘の寝ぼけ声にはっとなった。幸い、ベルベットはむにゃむにゃと何事か呟いた後で再び寝入ってしまった。
「ティエリア、ごめん…」
叱られた大型犬の表情でアレルヤが謝って来る。ティエリアはむうと腕を組んで考え込んだが、アレルヤの情けなさ満点の顔と声に溜飲を下げて彼を抱きしめた。
「…許してやる」
「ティエリア」
「これ以上騒いで、ベルベットを起こしたくないからな」
母親の表情で笑うティエリアに見とれたアレルヤは、ちょん、とバードキスをティエリアの唇に贈る。
「なんか、刹那の誤解の通りにしたいかも…」
「…馬鹿者−−−!」
ティエリアの鉄拳制裁がアレルヤの頬に炸裂する。ベルベットはそんな騒ぎにも目覚めずにぐっすり昼寝を続けるのだった。

H21.04.16
逆子体操のネタは左京秀一様からいただきました。
ありがとうございます。元気な二人目の赤ちゃん産んで下さいね!




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