宝箱

□慈愛
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慈愛 (ノジコ→ルフィ) 水天宮拓仄


 麦わら海賊団船長モンキー・D・ルフィは仲間に対して損得を考えない。
 仲間にする基準は彼がその人物を好きか嫌いかにすべて委ねられる。
 その結果が戦闘能力に長けた上に、秀でた特殊能力を持っている事は彼にとってはおまけのようなものかもしれない。
 気に入れば仲間にする。
 何があっても仲間にする。
 その真っ直ぐな視線、真っ直ぐな考え、己の信念を貫く姿に拒否ができる人間は多くない。
 一見強引に仲間にしているようにも見えるが、それは違う。
 何よりも仲間にと求めた人物の意志を尊重しているのだ。

「仲間になれ!」
「お前の事気に入ったんだ」
「オレと一緒に海賊やろうぜっ」

 数々の”わがまま”とも思える言葉の裏には、彼なりの確信を持った時にしか口にしない。
 そして仲間の命を預かる責任も彼はしっかりと自覚している。
 心を開き、全力で愛し、己の命をかけでても守る。
 温かくも力強い両腕で守ってくれる存在がルフィなのだ。
 自覚は無い、だが彼らの胸の奥には神のように船長が存在するようになる。
 人が神を信じるように彼らも船長を信じる事で、強くなっていける。
 それは幾年も重ね、新しい年を迎えてもそれは不動のもの。

 麦わら海賊団船長モンキー・D・ルフィの心は慈愛が満ちている。
 その心に自分も包まれたいと思うようになったのはいつからだろう?

「オレの仲間になれよ」

 再び彼が目の前に現れて、自分へ手を差し伸べてくれる事を夢見て瞳を閉じた。
 わずかに開いている窓からは湿った潮風が吹き、オレンジ色の実から優しい匂いが鼻腔へ届いた。

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