宝箱
□ずっと傍に
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ずっと傍に
「ちょっ…サンジ、駄目だって!」
「何がですか?」
「誰か来たら・・っ!」
「大丈夫ですよ…誰も社長室に滅多に来ません、だから社長・・」
この会社、株式会社サウザンドサニーの社長であるルフィと平社員のサンジは、上司と部下という前に恋人同士である。
ルフィに一目惚れしたサンジが猛アタックをして恋人同士になった。
唯一会える場所であるのが会社なので、サンジは昼の休憩時間にこっそりと社長室に忍び込み、ルフィ不足を充電してる。
「愛してるよ、ルフィ…」
「・・っズリぃ」
普段、会社では敬語で社長と呼ぶのに2人きりになると敬語ではなくなり、名前で呼んでくる。
その特別な感じがルフィは好きで、サンジに逆らえなくなる。
「いいだろ?キスだけだから…」
「…おう・・」
サンジはルフィの腰と顎に手をやる。ルフィも抵抗していた手を止め、サンジの背に手を回す。
「ルフィ…」
「はぁ〜い、終了っ!」
「ナ、ナミっ!!」
「…ナミさん」
いつから居たのか、ナミは扉に背を預け腕を組んでいた。
ナミは社長であるルフィの秘書であり、この会社の決定権を握る鬼の裏社長でもある。
「さ、休憩はもう終わりよサンジ君。」
そう言うと同時にサンジからルフィを離す。
「え・・でもまだ時間が」
「なんかパソコン壊れちゃったみたいなのよねぇ・・誰か見てくれないかしら…」
「ぅ…よ、喜んでぇ!」
この時ばかりはサンジは自分の体質を恨んだ。
女性には優しくするがモットーのサンジには、どうしても断れなかった。
社長室から出ようとドアノブに右手を伸ばした時、左手のスーツの裾を引っ張られた。
振り向くとルフィが何か言いたげにサンジを見つめていた。
「どうしました、社長?」
「・・俺、まだサンジと…居たいっ」
「っルフィ・・」
「なぁナミ、駄目か?」
「うっ…」
サンジの裾は掴んだままでナミの方を見つめる。
鬼の裏社長といわれるナミでも、社長であるルフィにはとても甘い。
ルフィのお願いにはどうしても断れなかった。
「・・わかったわ。今日の夕方の会議までは許してあげる。」
「ホントか?ありがとな、ナミっ!」
「夕方5時になったら、また来るわ。」
じゃあね、と片手を軽く振りナミは社長室を後にする。
扉が閉まると同時にサンジはルフィを抱きしめた。
ルフィもそれに答えるようにサンジの背中に手を回す。
「…我が儘だったかな・・?」
「そんな事ない。」
「なんだか今日はサンジの傍に居たかったんだ・・」
「今日だけ?」
「…いつもだけどさぁ・・」
顔を真っ赤にしてサンジの胸に顔をうめる。
「今日はいつもより傍に居たいって思ったんだ…」
「なんか極上の誘い文句だな・・」
「好きだ、サンジ・・」
「うん、愛してるルフィ…」
お互い見つめ合う。
そして何度も口付ける。
ちゅっ、と軽く音を鳴らした後、深く舌を絡ませ口付ける。
2人きりの甘い空間になる。
その甘い空間の中でサンジは、ずっとルフィに言いたかった事を今言おうと決心した。
サンジはキスの余韻に浸っているルフィの左手に、自分の右手を絡ませる。
「なぁ、ルフィ…」
「ん?」
「俺と結婚してくれるか?」
「いや、無理だろ。」
キッパリと今の甘い空間をも両断してしまう程のツッコミをされ、苦笑してしまった。
「法律上は無理でもさ…」
そういって左胸ポケットからシンプルな指輪を出して、ルフィの左手の薬指にはめる。
「形だけでもこうやってさ…夫婦として、そして一緒に暮らそう・・」
サンジはルフィの薬指にはめた指輪に誓いのようなキスをする。
それをルフィはじっ、と見ていた。
指輪にキスをした後、ルフィに口付ける。
そして至近距離のまま見つめ合う。
「ルフィ…結婚、してくれるか?」
「・・ぅん…、うんっ・・」
「俺はルフィを一生愛するよ・・」
「俺も…サンジ、愛してるっ」
ルフィの薬指と対になっている指輪をルフィに渡し、サンジの左薬指にはめさせた。
世界が祝福してくれなくても、君が傍に居てくれればそれだけで倖せだ。
なによりも今日からこの指輪が一生傍に居るという証…
〜END〜