短編4

□第九弾
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刀を振り下ろすと肉が裂ける音がした 刀を振り下ろすと骨が砕ける音がした。刀を振り下ろしたら血が身体中にまとわりついて気持ち悪くて気持ち悪くて、もう一度だけ刀を振り下ろした



 ・・・< 可愛い顔して残酷だよ >・・・



「ハァッ・・・・ハァッ・・・・・ハァ・・・・」


血の海の中で血まみれの刀を放さずに荒い息を繰り返す。目の前に広がる残骸は人だったもの、機械だったもの。


「はぁー、よくやるねぇ。恐れ入ったよ。」


パチパチパチと乾いた音と共に陽気な声が耳に届く。その声に振り返ったと同時に刀を構えなおしその人物を睨む。


「おー、恐い恐い。そんな顔しなさんなや。」


そこには燕尾服とシルクハットの褐色の肌の人懐っこそうな青年がいた。人間だ。即時にそう理解する。けれど構えた姿は崩さないまま睨み続ける。


「お前・・・・何者だ」

「ご想像にお任せするよ。さて、行き成りで悪いが嬢ちゃんの名前は・・・・「【ノア】だな。」


【ノア】それは詳しい事は知らずただ判るのは敵だということ。仲間を殺した一味。男は一瞬、驚いたように咥えていた煙草を落としそうになったが直ぐに手に取り、ニヤリと笑った。大正解、と。
そして私にハッキリと見えるようにシルクハットを取り、額の痣の様なものが見える。室長から聞いた【ノア】の特徴のひとつ、茨のような痣、刺青。やはりな、と小さく唸らせると。
男は人懐っこそうな表情で「何で俺がノアだってわかったのか教えてくれないか」と聞いてきた。男の質問にこたえる気はなかった、けれど最後の手向けには丁度いいだろう。と思い直す。


「お前が私に声をかけるまで私は気配を感じなかった。もし、私の感覚が鈍っていたのだとしても普通の人間はこんな惨状を見て冷静に出来るやつはいない。そして何よりお前からは臭う、私と同じ人殺しの血腥い臭いが。」


この惨状に何も感じない奴は決まって頭がイカレテル奴か既に麻痺している奴、殺しなれた奴。そして、私の目の前の男から感じるのは人殺しにしか判らない血と臓物の腐った臭い。


「なるほど。只の可愛らしい嬢ちゃんかと思ったが・・・・これは声を掛けた相手を間違えたかな」

「そうだな、お前は今すぐ私の刀の餌食になるのだから。」


震える手に言い聞かせるようにゆっくりと、だが殺意をこめて刀を構えなおす。切っ先は奴の喉。


「お、やる気?いいねぇ、好戦的だこと。だけど、もう満身創痍って感じだけど。」

「甘く見ないで頂きたいな。同胞を手にかけた奴が目の前にいるんだ、こんな傷で弱音を言うつもりはない。それに、少しブレーキが外れてたほうがお前には苦痛の死を浴びせられることができるからな。」


そう言ってニコリと笑うと、男もつられたように人懐っこい笑顔を見せる。
たっく、なんだかんだ言ってもアンタもやる気なんじゃないかよ。と言えば、まぁな。とかえってくる。


「たっく、可愛い顔して残酷なこった。ま、俺の好みに入るかな?気は進まないがいいぜ、かかってきなよ。」


その瞬間男の人懐こい笑顔は人殺しの笑顔に変わり、ソレより早くか同時に私は地を蹴った、






 後書き
可愛い顔して残酷なんだよね。
執筆時期 H20,04/30
修正時期 H23,08/28
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