短編2

□運命の出会い、とか
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「あははは・・・」


笑うしかない、笑いしかないじゃないか(大事な事なので二回言いました)
多分、鏡で顔を見たのならきっと頬は引きつって目は死んだ魚のような・・・まぁ、ようは酷い顔をしているんだろうことは予想がつく。人間どうしようもない状態に陥ったら笑うんだな、と乾いた笑いを浮かべる自分を客観的に見るしかない。
遠くの方で「危ないぞ、逃げろ!」という声が複数聞こえるが、腰が抜けて立ち上がる事も出来ない。というか動いたら多分流れ弾・・・・というか流れ自販機(?)が当たる。絶対に。


ヒュンッ


右頬にギリギリあたらずに髪にかすって自販機が真横を通り過ぎた。ほら、言わんこっちゃない。動かない方がいいじゃないか、こんな時はアレだアレ、現実逃避。


「いーざぁーやぁー!!」

「ははっシズちゃん相変わらずの化け物だね」

「殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス・・・・」


ふと、今朝見た星座占いを思い出した。
『今日はラッキーな1日!思いがけない運命の出逢いがあるかも!?』なんて絶対嘘だ。運命の出会い?あぁ、自販機とまさかのドッキンコ☆てか?
どんなラブコメだ。


シュン


頭上を掠めた自販機に、冷や汗を流しながら冷静に首を引いて縮こまる。よし、死んだら呪って出てやろう、絶対にだ。



 ・・・< 運命の出会い、とか >・・・



体育座りをし顔を膝に沈ませてフードを羽織って平穏を待つ事数分。
何度か命に危機にさらされながらもどうやら生き延びたようで、静かになった外界にパーカーを外しながらゆっくり顔をあげる。


「・・・へ?」

「大丈夫かアンタ?」


気まずそうに頭をかきながら私の視線にあわせてしゃがみ話しかけてきたのはバーテン服の男の人。
わーイケメン。ではなく、私の記憶違いでないのなら多分この人はさっき勢いよく自販機を投げて人。


「おーい」


状況把握に時間を要すること約数十秒。
どうやら私が死に掛けた原因の1人であるこのバーテンさんは戦地で蹲っていた私のことを心配しているようで。


「しゃーねぇ、新羅んとこ連れ」

「あ、はい。大丈夫です、はい。」


見事にフライング。
何とか返事をしようとしようとした結果、声が上ずり、どんだけ焦っているんだ私、と心の中で苦笑い。
言葉を遮られ、ポカーンとしているバーテンさんに「あのー」と声をかけるとバーテンさんは我に返ったようで瞬きを数回して「大丈夫かアンタ!?」と私の肩を掴もうと、した手を途中で止めて目を逸らしてしまった。


「え、あの・・・?」

「っ、悪ぃ。大丈夫か?ケガは?」

「不思議に無傷です」

「本当か!?」


心配性なバーテンさんを安心させるために指を動かして、腕をぶんぶんと回して、どうせだからジャンプしようと立ち上がろうとするが・・・


「あれ?」

「?」


スタンと尻餅をついて、腰があがらない。どうやら未だに腰はぬけてしまったままのようで。あはははは、と本日何回目かわからない乾いた笑いを浮かべると、バーテンさんは申し訳なさそうに顔を歪めてしまい。
あぁ、この人は優しい人なんだな。
項垂れているバーテンさんが顔をあげて、驚愕の表情をあげている。え?と首を傾げてみると何故かいつの間にか私はバーテンさんの手を握っていて。


「えぇ!?」


私自身、自分がこんな行動にしかも無意識に出るとは思わず驚いた。けれど、手を握られたバーテンさんはもっともっと驚いていて。


「あっあの!!」

「?」


今日の私は何か可笑しい、突然の非日常に思考回路がこんがらがってしまったのだろうか。


「貴方のお名前、教えてもらえませんか?」


ラッキーアイテムは自販機、だったのかもしれない。





 後書き
ウザヤくんはログアウトしました。
執筆時期 H22,07/25
修正時期 H23,08/26

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