短編5
□その目にうつす■■
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(あぁ、またこの臭い)
隣から僅かに香る臭い。臭いの元の隣の人は笑顔で接客中。
「「ありがとうございましたー」」
頭を下げてチラリと横を見れば、彼の目線の先には仲睦まじそうに手をつなぎながら買ったばかりのお菓子を抱えて店から出て行く小さな子供達。
彼の顔に張り付いた笑顔は先ほどの接客中の笑顔とは大違いの、無邪気な子供みたいに、何だかずっと生き生きとした笑顔。
私は彼のこの笑顔を見るたびに血の気が引いていく感覚を覚える、例えるなら蛇に睨まれた蛙、いや睨まれている・・・狙われているのは私ではないのだけど。
そわそわと微かに揺れるからの身体、彼は目を輝かせながら子供達が向かった先をじっと見つめている。
「・・・・・可愛いよね、あの子たち」
「そうっすね、すっげーいいと思いますよ。」
何がいいのだろうか、聞いてはいけないような気がするから笑顔で同意する。
無邪気な笑顔、その腹の内に何を抱えているのだろうか。知りたくなんかないけれど。
・・・< その目にうつす■■ >・・・
「じゃぁ、お先に失礼しまーっす。お疲れっしたー」
「お疲れ様、じゃぁまたね雨生くん」
手をふって雨生くんを見送る。
誰もいなくなった1人、静かな休憩室でテレビをつければ流れるのは最近頻発している一家惨殺事件。
きっと、明日にはまた被害者が増えているのだろうか、やけに楽しそうに帰っていった彼を思い出しながらテレビを切る。
明日のシフトは彼と同じ時間、多分またあの臭いがするんだろうな。
鉄の臭いによく似た、あの生臭い臭いが。
後書き
龍ちゃん夢?龍ちゃんでいくとどうしても血生臭いのしか浮かばない。
最初に考えたやつなんかかなり酷すぎて、アウトだった。
龍ちゃん追悼式ようの夢、なのかなぁ?
執筆時期 H24,03/07