短編5
□第十六段
1ページ/3ページ
「それ、疲れないんですか?」
赤い瞳と黄金色の髪の少年、ギルガメッシュは目の前の、ニコニコと笑顔を浮かべている女に問いかけた。
ギルガメッシュの問いに女は一寸驚いて口をぽかんと開けるも、すぐに何のことだと再び笑顔浮かべて問い返す。するとギルガメッシュは即刻で「それですよ、それ」と女を指で指すものだから、女は人を指で指すのは失礼じゃないのかな、苦笑いを浮かべながら首をかしげる。
「ほらそれ。お姉さん、本当はそんなにニコニコしてるキャラじゃないですよね?隠さなくってもわかりますよ。まぁ・・・・彼は気づいてないみたいですけど」
少年王は言う、貴女の笑顔は偽者だと。
「で、何が目的なんですか?」
「ひどいなぁー、目的なんて何もないよぉ」
少年王は問う、貴女は何を考えているのかと。
「まぁ、シラを切るつもりなら別にいいですよ。でも―――」
一寸置いた後、ギルガメッシュは女をじっと睨み付ける。赤い瞳から流れる鋭く冷たい視線、俗に言うこれは殺気というもの。
「変な動きを見せたら・・・・・」
にこっ
まるでこの空気を壊すかのような女の笑顔に今まで睨んでいたギルガメッシュは眼をそらし、ため息を吐くと女に背を向ける。
「はぁ・・・・もういいですよ。」
このまま背を向けて去っていくギルガメッシュに女は手を高く上げて「ではまた」といいながら手をひらひらと振る。
そして数秒か、数十秒か、ギルガメッシュの背が見えなくなると女は振っていた手を下ろして、ぐっと拳を握る。
『疲れないんですか?』
頭に響くのは先ほどのギルガメッシュから問い。
「・・・・・そりゃあ疲れるさ。でも私は彼らの中では一番年上だし・・・いいお姉さんにならなきゃだし・・・・それに、真面目でいい人でいなくちゃ。」
脳裏に浮かぶのは、青い髪を靡かせながら人懐っこそうに笑う大好きな彼の笑顔。
・・・・< 君は私を見てくれないでしょう? >・・・
マスターでも魔術師でもなんでもない私にとって、貴女の視線に入るためには自分を偽るすべしか知らないのです。
後書き
一般人なお姉さん。珍しく完全片思いな夢にしてみた。
夢主の演技に気づいているのは僅か少数、かなり演技派な夢主。
ちなみに『彼らの中では一番年上だし』というのは、衛宮邸居候マスター組のこと。
執筆時期 H24,01/01