短編6
□第十八
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「お前は馬鹿の極みだな」
突然のサーヴァントの言葉に私は肩で息をしながら苦笑いを浮かべるしかなかった。
マスターである私を馬鹿よばわり、しかも馬鹿の極みと来た。失礼なことこの上ないが私がそれに反論しないのは、反論したところで口達者なこのサーヴァントに私は言いくるめられて負けてしまうのが関の山で安易にそれが想像がつくからと、先ほど二人でアリーナ内を全力疾走したばかりなのでそんな気力がないから。
あと、馬鹿呼ばわりはともかく彼の怒りは納得のいくものだったからと言える。
・・・・・・まぁ、キャスターに肉弾戦やらせるとか無理ゲーだよね。知ってる。
絶賛引きこもり中のジナ子に「キャスターで肉弾戦とかマジぱねぇwwwww」と大笑いされたのは記憶に新しい。
「・・・・・・・何か私足早くなったかもしれない。逃げ足的な意味で。」
「馬鹿か、それは自慢になどならん」
同じように肩で息を吐くキャスター。
エネミー相手に戦闘になって、負けそうになって逃走とか何回目、いや何十回目だろうか。回復アイテムよりリターンクリスタルのほうが消耗はげしいとか余裕だよね。
端末越しの生徒会メンバーもまたかと苦笑いを浮かべている姿が何故か想像がついてしまう。
周囲にエネミーのがいないのをマップを見て確認すると、少し休憩しようとキャスターに声をかけて階段に座り込む。
「つ・・・っかれたぁ・・・・・・」
「だから俺は言っただろう。大人しく旧校舎に引きこもっていたほうが安全だと。」
「いや、まぁそれはそうなんだけどね」
「負けそうになり、逃げて、疲れ果て。アイテムは減るがレベルは一向にあがらず全く効率が悪い。なぁお嬢さん。」
「耳に痛いねぇ。でも文句言いながらも一緒にきてくれるんだよね、君は。」
キャスターにそう言って笑いかけると彼は途端に私から目をそらす。
身体を動かして表情を伺わなくても、彼が照れているということは一目瞭然で、初めて会ったときから自分は外れだザマァ見ろとか、役立たずのサーヴァントだとか、お前の戦いは戦う前から終わったも同然だとか。散々自虐しまくり暴言を吐きまくった彼だけれど、そのクセに私がわざわざ行かなくてもいいサクラ迷宮へと行くと伝えると文句を言いながらも当然のように着いて来てくれて、エネミーと出くわせば前に出て戦ってくれて、「もう付き合いきれん」とか言いながらも一緒にいてくれて。
全く、何て素直じゃないサーヴァントなんだろうか。
「・・・・まぁ、マスターを守るのはサーヴァントの役目だからな。役立たずなりに、サーヴァントとしての責務は果たすさ。」
ほらまた。
けれども、そんな彼と一緒にいたいと、彼の冷たいように暖かい言葉が好ましいと思っている私も私で。まぁ、彼の絵本だけでなく、彼自身のことも含めて私の隣で憎まれ口を吐いているサーヴァントが大好きになってしまったのだからしょうがない。
「よっこらせっと、さぁてそろそろアリーナ探索を再会続しようか」
「・・・・・まだ続ける気か。馬鹿だ馬鹿だとわかっているが、全く懲りないな」
「塵も積もれば山となる。逃げてばかりだけど、少しずつ戦闘経験は積んできてる。最初の頃より戦闘のターンは長くなってきてる。きっとそのうち、その分厚い本が鈍器になってエネミー一発KOな未来も遠くない!」
「お前は俺<キャスター>に何を求めているんだ・・・・・・」
「まぁまぁ、そう言わずに。大丈夫だよ私達なら。貴方の嫌いなハッピーエンドだって夢じゃない。そういう物語もたまにはいいでしょ?アンデルセン。」
きっと君となら、人魚姫よりよりも美しく、マッチ売りの少女よりも暖かく、雪の女王よりも幸せなハッピーエンドになるはずだから。
彼はまた、私から視線をそらした。
・・・< きっとこれは幸せ<ハッピーエンド>に繋がる物語 >・・・
「・・・・・・この子たち、会話が駄々漏れだってことわかってるのかしらね」
「いいじゃないですか、青春ですねぇ。ミスラニ、記録のほうは?」
「バッチリです会長。高画質高音質で録画してあります。」
「バッチリです、さすがですね。」
「・・・・・やれやれ」
後書き
アンデルセンたんかわいいです。CV子安の衝撃と童○発言には爆笑しましたが大好きです。
凛とラニが生徒会にいる時点でアンデルセンの本はとっくに鈍器になっているんだろうなぁ。
執筆時期 H25,10/07