短編6

□第20弾
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どうしてこうなった。

私は今、何故かランサーに抱きかかえられていた。
胡座を組んだ上に体育座りで座らせられ、腕を回されて身体を固定されてしまえばもう逃げ出すことなどできない。ランサーの顎は私の肩に乗っており、少しでも横を向けば彼の顔が視界いっぱいに入ってくる。
・・・・・少しでも冷静になろうと今の自分の状況を客観的に整理して何だか余計に恥ずかしくなってきた。


「ねぇ、ランサー・・・・・」

「いいから動かねぇで大人しくしてろ」


先程から離してくれと、開放してくれと、声をかければ返ってくるのは同じ言葉ばかり。
ランサーは何か言うたびに私の耳に直にそれは届いてきて、心臓がバクバクとうるさくなる。いや、心臓はさっきから、ランサーに抱きかかえられた時からうるさいくらいに自己主張しているわけだが。


「―――っ!?」


身動ぎし息を吐くランサーに、身体が自分でも驚くくらいビクッと震えれば耳元聞こえてくるのはランサーの笑いを堪える声。それに軽く頬を膨らませば、気持ちのこもってない軽い謝罪が聞こえてくるが、彼が喋るたびに耳がゾワゾワするから正直喋ってほしくない。


「ちょっ、なにし・・・・・」


肩に乗せていた顎を動かしはじまてランサーに、やっと開放してくれるのかと思ったが人生そんな甘くはないようで、なんということかランサーは今度は首筋に自分の顔を埋めてきた。
先程よりも一層感じる彼の感触と体温に、心臓は壊れるんじゃないかってくらいうるさくなる。


「ひゃっ」


そのまま何もしないのならまだよかった。そうしたら自然と慣れてきて私の心臓も少しは大人しくなっただろうし、私も慣れてきたかもしれない。
けれど、ランサーは、この馬鹿野郎はあろうことはペロリとまるで飴のように私の首筋を舐めたのだ。今日一番の悲鳴をし、大きく身体を揺らす私の動きを封じて、首を舐め続けるランサー。お前は犬か。いや、狗か。
くすぐったいのと、恥ずかしいのと、自分の口から荒い息が吐き出されてきたのに気付いて、さすがにこれ以上はマズイと判断してまだ拘束が緩かった左腕に力を込めて後ろを、背中にぴったりとくっついているランサーの鳩尾へと勢いよく肘を入れた。もちろんありったけの魔力を込めて。


「がっ・・・・・」


痛みで拘束が緩くなった隙を見逃すわけもなく、一気にランサーの拘束を解いて距離を取る。
腹部を抑えて痛みに悶絶するランサーには悪いが、自業自得である。寧ろこれでも軽いほうなのだから感謝してほしい。


「お前なぁ・・・・・」

「それはコッチの台詞だ馬鹿ランサー!!舐めるとか変態か馬鹿!!」

「いや、匂い嗅いでたら興奮してな」

「馬鹿野郎!!!変態!!!」



 ・・・< 甘いお菓子じゃあるまいし >・・・



流石にランサーのあれはやりすぎだった。そのため、当分はお触り無し。というか、今日は1人でいろと命令して私は衛宮家に避難することにした。
事情を話せば納得して味方になってくれた女性陣達に感謝して、家主である士郎に宿泊代代わりに家から持ってきた米袋を渡せば同情と一緒に大歓迎してくれた。
持つべきものは理解ある味方と、賄賂である。


「安心してください。ランサーが来たら私の宝具で追い出しますから。」

「頼もしいわセイバー。ありがとう」


さすがにエクスカリバーがきたら可愛そうだが、今日1日は反省してもらわなければならない。



 後書き
執筆時期 H26,10/08
修正時期 H26,11/07
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