短編6
□家政夫と一緒
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「・・・・・なんてこったい」
目の前の物体を見て、自分の芸術的センスに思わず拍手喝采しそうになった。
だがなんとか現実に戻って、もう一度ソレをみる。やはり何度見てもそれは変わらず、ダークマターにしかみえない。
なんだこれ。
数十分前、たまには私が料理を作ろうと意気込んで台所に向かい冷蔵庫の中の食材を見ながら何を作るか考えて、そうだチーズオムレツを作ろうと思ったんだ。
よく見れば近くには卵の殻とチーズの袋が置いてある。あ、やっぱりチーズオムレツ作ってたんだと再認識。
私としては綺麗な黄色でナイフで中を割ればとろっと出てくるチーズを、何て想像して作っていたはずなのだが。出来た完成品は、あら不思議。紫色の煙をプスプスと出す黒い塊。
ど う し て こ う な っ た し 。
「・・・・・」
いや、いやいやいや。これはちょーっと火加減が強すぎただけであって、きっと中を切れば半熟の卵ととろりとしたチーズが姿を表わすはずだ。
そう自分に言い聞かせてチーズオムレツのはずの物体に包丁をぶっ刺して半分に割る。すると、中から出てきたのは・・・・茶色い何か。え、何これ。
ていうか流石にこれ以上は現実逃避は出来ないぞ。これは何だ、チーズオムレツとは到底見えないこれは何だ、私は何を作ったんだ?その前にこれは食べ物なのか?
自分で作ったものとはいえ流石に食べたらお腹をこわすだけでは済まなそうな、人様に食べてもらうどころか自分でも食べたくはないソレを眺めること数秒。ふぅっと息を吐いて、ソレを私はそっとゴミ箱へと
「待ちたまえ、何だそれは」
「げ、アーチャーさん・・・」
「げ、とは何だ。げ、とは。全く・・・で、再び聞くが君が今ゴミ箱に棄てようとしているその黒い物体はなんだね?」
▼はいごから かせいふのサーヴァントが あらわれた!!
ソレが乗った皿を持った手はアーチャーさんに掴まれて逃げ場がない、てか捨てることが出来ない。
くそ!腕さえ自由ならさっさと捨てて知らんぷりできたものを!!
「いやぁ、これはなんといいますか。自然の産物?というか、人様には見せられないよ!!なものといいますか、太古に封印されていたはずの闇よりいでし暗黒の覇者、闇帝<ダークエンペラー>の魂といいますか、なんといいますか・・・・・」
「・・・そうか、では聞き方を変えよう。君が今しがた捨てようとしていたチーズオムレツになるはずだったその物体はどうしてそうなった。」
「わかってるんじゃないんですか!!!!」
腕を掴まれてなかったら、突っ込みヨロシク手に持っていた物体Xを地面かアーチャーさんの顔面に投げパイのごとくたたきつけたというのに。
どうやらアーチャーさんは一部始終を見ていたらしい。いつの間に、とか。気配を消して見てたとかマジ怖い、とか。さすがはサーヴァント、とか。いろいろ思うところはあるのだが、わかってたんなら最初から言って欲しかった。
私があんな中二病発言した意味は一体・・・・・っ
「・・・・・こほん。知っているのなら逆にお聞きしたいんですけど、アーチャーさんにはコレが何に見えますか?」
「料理、とは百歩譲っても言えんな。ソレを料理というなら料理を侮辱することになる。」
「そこまで言いますか。まぁ、そのとおりだと思いますけど。」
作った本人ですらこれを全否定したいのに、他の人に認めてもらえるわけがない。桜ならば、優しい言葉をかけてくれるかもしれないが、きっと目を合わせてくれないし苦笑いを浮かべることだろう。あれ、なんでだろう想像しただけで涙が出てきそうだ。
「答えはわかりきってますけど、食べてみます?」
「断る。」
「デスヨネー。」
私だって食べたくない。
結局この黒い物体はゴミ箱に行きになりました。もったいないとは思うけどしょうがない、どうやって食べろってんだこれ。
「では、やり直しだ。もう一度最初から作ってみたまえ。」
「げ、もう一度ですか?正気ですか!?アーチャーさん一部始終ご覧になってたんでしょ?だったらさっきの二の舞いになるのは想像つくと思いますけど!!」
「安心したまえ。今度は私が横で指導してやろう。」
「・・・・普通にアーチャーさんが作ったほうが美味しいし効率いいんじゃ」
「何事も勉強だ。将来のためにも自炊くらい出来るようになりたまえ。さぁ、始めるぞ。」
・・・< 家政夫と一緒 >・・・
「どうしましょう、アーチャーさん。これ食べれますよ!卵の色してます黄色いです!中から白いチーズが出てきます!!美味しいです!!!」
「落ち着け、それが普通だ。やれやれ、やればできるじゃないか。先程のはどうしてああなったんだか。」
「さぁ?やっぱり、隠し味にってギルガメッシュさんの宝物庫からパチった変な薬入れたのかまずかったんですかねぇ」
「・・・・・・・・・・」
後書き
執筆時期 H26,05/03