短編6

□第21弾
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パチンッ


今までなかったはずの、ないことにさえ気づいていなかったピースの欠片が埋まったような音がした。


なんてことだろう。少女は頭を抱えてうなだれた。
もう一度、確かめるように少女はなんてことだと呟いた。少女が俯いているため表情は見えないが、少女の肩は僅かに震えており、それが怒りなのか、悲しみなのか、絶望なのか。それとも喜びなのか。
その答えは少女の顔を覗きこんでみれば簡単で、少女の唇は弧を描いていた。


「どうしたマスター。別にアンタのツボに入るような話はしていないはずだが?」


眉を八の字にして苦笑いを浮かべ少女の前で屈みながらその表情を伺う男。
彼の姿はどこかの学校の制服らしきものを着ている少女と比べると異様なものだった。青のボデイスーツを着、ひとつにまとめた青い髪と鋭い赤い瞳。少女は男にランサーと呼びかけると、まるでそれがスイッチだったかのように顔を上げ首を大きく反って笑い出した。


「あは、あはははっ」


少女の突然の行動にランサーと呼ばれた男は驚きおもわず一歩少女から距離を取る。
数秒、数十秒。少女は思いっきり笑いそれが一段落つくと、ふぅっと息を吐いて若干引いているランサーに驚かしてすまなかったと軽く謝りながら、近くにあったベッドに腰を掛ける。


「だ、大丈夫かマスター。まさかさっきの戦闘で頭いかれたんじゃ」

「失礼だね。さっきのはそういうのじゃないよ。感動、したんだよこの運命の偶然に。いや、必然だったのかな。」

「はぁ?」


意味がわからないと口をぽかーんと開けるランサーに、また笑いがこみ上げてくるのを抑えながら少女はポケットのなかから売店で買っていたパンを取り出しランサーの口の中に突っ込む。
もがもがと何か文句でも言っているのであろうが口にパンを突っ込んでいるのだから聞こえるわけがない。
しょうがなくモグモグとパンを食べるランサーにフフッと少女は笑い、三角の赤い模様が刻まれた右手を甲を見せるようにランサーの前に差し出す。


「わからなくてもしょうがないわ。それが多分当たり前なのだから。まぁ、覚えててくれてたのなら嬉しいんだけど、そこまで高望みしてはいないもの。」

「何を言って」

「だけど、一言だけ言わせてちょうだい。貴方がわからなくても、覚えていなくても。この言葉だけは言わせて欲しいの。」


私は・・・・・いや、私達は貴方に会いたかった。



 ・・・< 遠い遠い私と私の >・・・



何を言ってるんだ。そんな表情を浮かべているランサーを見ながら、いろいろな想いがこみ上げてくる。
その仕草、言葉、姿、声、表情、匂い、全て全てが懐かしく、とうとう感情が高まって笑顔を浮かべながら涙を流せば、驚いて私の言葉も何で泣いてるのかもわかっていないくせに、しょうがねぇなと頭を撫でてくれるランサーに、あぁやっぱり彼だ。そう瞳を閉じた。



 後書き
Extraです。ランサーです。
執筆時期 H26,02/05
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