短編6

□第21弾
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「別にさ、何があったかなんて無理には聞かないよ。」


そりゃ教えてくれたら一番いいけどさ。人間隠したいこと言えない事の1つや2つあるだろうし。だから


「別に何があったかなんて無理に言わなくてもいいよ。」


地面に座り片膝を抱え蹲る彼の背中に寄りかかるように地面に腰掛ける。
下を向く彼の顔は私からは見えないけれど、ピクッと小さく彼の体が揺れたのを感じた。


「何も聞かない、何も言わなくて言い。でも君を1人にしてあげるほど私は優しくはないんだ。だからさ、せめて君の一番近くにいることを許しておくれ。」


空を見上げれば雲ひとつない月と星が輝く綺麗な夜空が広がっている。
今にも泣き出しそうな、私よりもずっとずっと大きいはずの小さな背中。震える背中を抱きしめることはしないけれど、血が流れてきそうなほど強く握られた指を手を包み込んであげることもしないけれど、私の胸で泣きなさいとか臭い台詞も言わないけれど。
でも、でもその代わりに私はただ何もせずに君の傍にいよう。



 ・・・< 私に出来ること >・・・



いつもは見せない君の弱さ。
全部を自分で抱えて何も言ってくれない君だけど、私の服を震える手で小さく掴んでくれる、それだけ、それだけで私が貴方の傍にいる理由としては充分だから。



「ほら、見上げてごらんよ。月がとっても綺麗だよ士郎。」


でも、もしも君が私に何があったのかを話してくれたのなら、私はその背中を抱きしめて、手を包み込んであげよう。
あと胸だってたまにくらいなら貸してあげてもいいかもしれない。



 後書き
士郎は士郎でもアーチャーよりな士郎なイメージ。
執筆時期 H26,03/04
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