短編

□誰か拾ってください、切実に。
1ページ/1ページ





[開発中につき立ち入り禁止]


と赤い文字で書かれたプレートを下げた扉の奥、真っ暗な部屋で火花が飛び、機械音が交差している。そんな中で何かと相対しながら黙々と時に「フフフッ」と笑いを零す白い物体。たまに通り過ぎる人がその声を聞くたびに「ひぃっ」と言って叫んで去っている。


「よぉし、出来た出来た。」


何が出来たのだろうか、白い物体は徐に立ち上がると九十度回転して手(だと思われるもの)を動かしながら順番にゴーグル、マスク、フードが取っていく。徐々に見えてきた素顔の先にあるのはとても満足そうな笑顔。そしてその笑顔で背後を振り返り見つめているのは先ほどまで作っていた
一般的に言うみかん箱。
女は出来上がったばかりのみかん箱を抱きかかえながら、満足そうな笑顔から不敵な笑みに変えた。
そして時間は数十分前に遡る。



 ・・・< 誰か拾ってください、切実に。 >・・・



「ったく、あのハゲ・・・・じゃなくて一角の野郎・・・・」


ブツブツと文句を言いながら廊下をドシドシと歩いていく。
イラついている原因は数分前、歯が折れたからまた作ってくれと一角がやってきて、前に一角の歯型を採ったのが保管室にあるから取って来てくれと阿近さんにパシられ・・・
全く、なんで私がこんな雑用を、しかも一角のためにしなくちゃいけないんだよ。と、ブツブツ愚痴りながらも阿近さんには逆らえない。
・・・仕方ないとばかりに保管室へ行くために技術開発局特有の薄暗い廊下を歩いていく。


「ん?」


死神の勘という奴かそれともただの偶然かインスピか、廊下の奥から何やら人の気配がする気がする。しかもかなり嫌な感じ。本来なら無視したいのはやまやまなのだがこの先に目的の保管室があるため無視できない現実がとても悲しい、悲しすぎる。
嫌な予感を抱えながら、白衣の下に隠しといた[技術開発局]印のマユリ型懐中電灯で廊下の奥を照らしてみると見えたのは懐中電灯そっくりの不気味なロボット
そして意識が一時停止・・・・アレ?


「眩しいじゃないか、照らすんじゃないヨ。」

「ひえっ、局長!?あぁっっ、すっすいませんっ!!」


もとい、我が技術開発局局長。
未だについていかない意識に「全く、じょうがないネ」とか言ってロボットが近づいてくる、近づいてくる、近づいて・・・・・・


「って、ちっちゃ!!」

「見下ろすんじゃないヨ、不愉快だネ」


私の記憶が正しければ局長は私より背が高いはず、少なくとも十センチ以上は。けれど今目の前にいる局長(らしき人物)は、私の背が数分で一気に伸びたのでなければ私のより確実に低い。三十センチくらい低い。
強いて言うならこんな外見じゃなければ浮竹隊長ほどじゃないけど棒付きの飴でもあげたいくらいに小さい。
・・・・・え、隠し子?


「ふむ、まぁ君が驚くのも無理はないネ。今の私の状態は薬によって身体を構築する霊子の粒を縮小化させているからネ。どうだい、素晴らしいだろ。」


技術開発局に入ってからいろいろと耐性はついてるハズだが、流石にその姿は・・・・
顔色が悪くなっていくのを感じながら「どうかネ」と首をかしげながら感想を聞いてくる局長に少し無言で考えるも誉めようの無い言葉ばかり見つかり、最終的に


「流石です、局長」


とか、ネムさんのような事を言ってみる。あぁ、あの人も大変だよなーとしみじみ思いながら。
私が誉めたのがお気に召したのか「そうだろう!やはり私は素晴らしいネ!!」とか言っている局長。そして、そのまま薬の説明を生き生きと話し始める。
あ、やばい眠くなって来た・・・・。


「―――しかしネ。この薬、あまりに効果がよすぎてしまってネ。一定時間が過ぎると少しずつ縮小化してしまうんだヨ。個差もあるが一時間ごとに6センチ、といったところかネ」

「じゃぁ、局長はこのままちっちゃくなるって事ですか?」

(どうせならそのまま消滅しちゃえばいいのに。)


という本音はとりあえず隠しておこう。


「もちろん、薬を大量に投与しなければ一定時間を過ぎれば身体は元に戻っていくがネ。」

「で、その一定時間を過ぎない限り局長はこのサイズのまま、もしくは更に小さくなり続けるわけですか?」

「そういうことだネ。だが流石にこの身体も飽きてきてネ、そこで君の出番というわけなんだヨ。」


なんだか、嫌な予感がする。ちなみにこういう時の勘だけはよく当たる。かなり当たる。当たらなくていいのに。つか、さっきも当たったし。


「私が元に戻るまでの間、君に私の暇潰し役をやってもらおうと思っているのだが、どうだネ?少し大きいぬいぐるみを持っているようなものだヨ。悪い話じゃないはずだヨ。」

「お断りします。私も貴方ほど暇じゃないので。」


あ、つい本音が。つかめっちゃガン見されてる。めっちゃ睨まれてる。


「・・・・じゃなくて、私がするよりもっと暇潰しになるいい方法があるんですけど」

「ほぅ、聞いてみてもいいがネ。」

「聡明な局長なら知ってるでしょうけど、現世に時折道端に謝罪と願望を書いたダンボール箱の中に育てきられなくなった小動物を入れて他の里親を捜すというシステムがあるんですよ。」

「もちろんだヨ、私を誰だと思っているんだネ」


ロボット局長だと思っていますよ。


「・・・・ゴホンッ、実は、ダンボール箱の中に入った動物達は可愛く見えるという心理現象があるんですよ。それは現世の人間だけでなく我々死神にも使えるとおもうわけで・・・つまり、ちっちゃくなった局長をダンボール箱の中に入れて心揺さぶるメッセージを書けば・・・あら不思議、局長はとても可愛い小動物に。そして、そんな可愛い局長は心優しい里親が一定時間まで育ててくれるという方法なんですが。」

「ふむ、なかなか興味深いネ。」

「きっと、面白い結果になると思いますが。あ、OKならこの書類に印を押してくださいね。」


笑いを堪えながら白衣から出したのは

[私、十二番隊隊長及び技術開発局第二代目局長涅マユリは今回のことについてどんな事態になっても誰のせいにもしないことを誓います。]と、書かれた書類。そして、勘がいい奴は何かしら裏があると、絶対気付く代物。ちなみにどこから出したかは企業秘密のノーコメント。
それを局長に笑顔で押し付ければ「まぁ、しょうがないネ」と言いながら判を押してくれた。つか、なんか書類に付け足ししてないか?
返された書類を見て少しひいたけど、まぁ問題ない範囲なのでいいや。


「では、ダンボール箱を作ってきますねので。少々お待ちください。」

「なんだネ、そこら辺にある物でいいのではないかネ」

「いいえ、局長。たかがダンボール箱といえども局長のような素晴らしい方を入れるのですからそれなりの最新の技術を取り込む必要があるのです。それに、そのくらいしなくては私が面しr・・・局長は楽しめないと思いますし。」


おっと、ついまた本音が。局長は気付いてないのか「フム、それもそうだネ」と納得している。うん、やっぱり馬k・・・・・そんな局長を遠目に見つつ「では、行って参ります!」と一声かけ瞬歩で消える。
あ、録画用にビデオカメラもっていかなくちゃな。とか思いながら。









そしてカレコレカレコレ数十分後。別室にてモニターから見えるそれは、衛画面越しだというのにとても異様な空気を放っていた。箱の中で蹲り(体育館座り)首かしげ見上げている者がいてそしてソレに見つめられる不幸な某友人達。
箱の中で(以下略)こと局長は「さぁ、さっさとワタシを拾いたまえ」と訴え、箱の中の局長と箱に書かれた[さぁワタシを拾いたまえ、ちなみにコレはお願いじゃないヨ]の文字を交互に見つめ冷や汗を流す不幸な某友人達こと恋次と修兵とイヅル。
発案者の私自身でさえ思う。これはキツイ、キツすぎる。


「いやぁ、それにしても運がないなぁ・・・・」


今にも逃げ出そうとしている修兵にそれを止めながらパニクッテいる恋次、現実逃避しているイヅル。
いや、もうご愁傷様です、としか言いようがない・・・・。とりあえず謝っとこう、そうしよう。ごめん。でも面白い、かなり面白い、がキツすぎるこの映像。ごめんよ友人たちよ。
本当はこの後編集して売りさばく予定だったのだが、あまりの酷さに少し考えはじめる。・・・・・どうしよう、これ。とりあえず、何も言わず録画したままの状態でこの部屋を後にする。
そして、空を見上げ何も無かったかのように


「・・・一角の歯でも取りに行くか。」


また、保管室へと歩み始めた。

ごめん、みんな。骨は拾っといてやるよ。








 後書き
なんじゃコリャ。放置プレイですか!?いや、本当にごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい・・・・
マユリを弄らないってことにしたのに・・・・アレ?
ちなみに付け足しをされた書類には[・・・・・誰のせいにもしないことを誓うヨ。]ってなってただけ。そんだけ。うっわーどうでもいい。
また直して出直してきますっ!!(逃)
執筆時期 H21,01/10
修正時期 H23,08/27
 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ