「――……どう、した…?」
(なんで、泣いてんだよ)
向けられた視線は、そう言っていた。
でも、自分でもよくわからない。悲しいのか嬉しいのか、それだけはハッキリとわかるけど、なんでこの涙は流れているのか、私にはよくわからなかった。
驚きと、喜びと、戸惑いと、ほんの少しの疑い。一気にいろんな気持ちが押し寄せてきて、何も話すことができない。
「泣くほど、嫌、なのか…?」
そんなこと、ない。でも、やっぱり声はでなくて、伝えなきゃと首を横に振った。
それを見たアルトは、少し表情を崩した。その優しい顔、とっても好きだけど、ちょっぴり嫌いなの。だってその表情は、私だけのものではない、から。
でも今、この瞬間は、私だけに向けられた、私だけのモノ。他の誰でもない、あなたから私への。
「バカ、だな…」
怒ってるわけでも、呆れてるわけでもなく、そう呟いたアルト。止まることを知らない私の涙と小さく響く嗚咽が、より一層この静かな二人だけの空間を際立たせた。でも私たちの間に寂しいような、そんな雰囲気はなくて、ただただ暖かくやわらかい空気に満ち溢れていた。
「私、も、すき…、すき、です…っ」
泣く
(でもそれは悲しみの涙じゃなくて
よろこびの、なみだ)