小話

□苦しみはいつだって傍らに
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俺がジヴと別れてから大分経った。
事務所のソファに仰向けに寝転び、つまらない天井を眺める。
忌ま忌ましいドラッケン族のクドゥーが聞こえてくる。
ギギナという名の馬鹿が大切にしている椅子のヒルルカが、視界の端で確認できた。
俺とギギナが初めて関係を持ってしまってから、5日ほど経った。
事の始まりが俺の一言だった事を思い出すと死にたくなる屈辱だ。



その時の俺といったら、ジヴがいなくなっただけであんなに狂ってしまうのかと問い掛けたくなるほど衰弱していた。
常に経営難なこの事務所の存続をかけて、どんな小さな面倒臭い仕事でも探して引き受けなければいけないこのご時世に、俺は一人ソファで俯せに寝ていたのだ。
ジヴにあって謝りたい訳じゃない。
ただこの喪失感に潰されそうなだけ。
掛けたままのクルークブリレが、そんな傷心の俺に容赦なく突き刺さるが、あまり痛いという感覚が働かないのか特に気にはならなかった。

そこへギギナがやって来た。
ヒルルカを触る手つきの優しさの、3分の1位俺の扱いに分けて欲しいものだ。
 

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