小話

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「あ、ユラヴィカ。」

突如開いたドア。
そこには、あいつと似た長身男子が立っていた。



ところで今は授業中。
当然教師はその登場に驚くと思ったが、どうやらそいつ‥ユラヴィカ?が遅れて来るのはいつもの事のようで、皆一瞥すると視線を戻した。
今朝あのギギナとかいう奴と言葉を交わしていた、耳の尖ったオレンジ頭の奴は、教室の一番前のドア側の席なので、ドアから入って来た人と一々言葉を交わしている。
上記の音声もそいつのものだ。
そいつが、はよ と声をかけると、遅刻してきた奴は ん、と一言返事をして席についた。

「ん?」

授業中だが、普通の音量でそいつは言葉を発する。

「あの赤髪、何者だ?」

当然俺の事だと思い、振り返る。
ユラヴィカには、高い鼻梁を横に跨ぐ蝶の入れ墨があった。
適当に伸ばした銀髪を、これまた適当な所で細かい三つ編みにしている。
間違いない、あのギギナとか言う奴と同じ種族だ。
あのギギナとか言う奴も顔に竜と炎の入れ墨があったし、銀髪だったし長身だった。
ならば同じ種族のこのユラヴィカからあいつの弱点を探れないかと思ったが。
 

「それに‥あの自称番長のアシュレイ・ブフ家のギギナとやらがおらぬようだな。」

自分と似た長身はすぐにいないのが分かったらしい。

どうやらユラヴィカにとって見慣れない顔の俺は特に興味をそそる存在ではないらしく、寧ろギギナの動向の方が気になるらしかった。

「今日こそ私とどちらが番長に相応しいか決めに来たというのに‥おい女、ギギナは何処へ?」

女と呼ばれて返事をしたのは亜麻色の長い髪の女。
授業中に爪にエナメルを塗っていたらしく、両の手をぷるぷる振っている。

「知らないわよそんな事。
大方また購買にでも並んでるっピー」

語尾が上手く聞き取れなかった気がする。
人語ではない何かが聞こえた気がするがたぶん聞き間違いだろう。
というか今は2時間目だが、この学校の購買は何時から開くんだ?
隣の女に聞いてみる事にした。

「なあ、購買って何時から開いてるんだ?」

 

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