小話

□ホワイトアウト
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窓際で日の光を浴びている現在持ち主不在の椅子があった。
何の気無しにそれに腰掛け、ジヴーニャがバレンタインにと作ってくれたショートケーキを頬張った。
料理や菓子作りというのは性格が表れやすい。
ジヴーニャが作るものはいつも何かが足りない感じで、形はいびつだ。
しかし今回のケーキは、前回のアップルパイと違いちゃんと人間向けに製作されているようで、まあまあ美味い。
ショートケーキを食べながら、来月のお返しは何をしてやろうかといろいろ思考を巡らせる。
得意の料理で素直に喜ばせるか‥またおちょくってやるか‥云々。
視線を宙にさ迷わせ考え事をしていたら、ケーキを零してしまった。

「あ‥、これやばいな」

俺の足の間に落ちた生クリームは、勿論現在持ち主不在の椅子にべったりついてしまった。
ギギナが帰って来る前に処理しなければならない‥‥なんたってこの椅子はギギナが自分の命より大切にしている‥

「ヒルルカ!!!!?」

‥‥‥このタイミングで帰ってきやがった。

「なんと言う事だ!ヒルルカが!」

椅子に駆け寄り慌てているギギナは十三階梯の剣舞士たる威厳を全く感じさせない。
言うなれば最も親しみやすいギギナだ。
ただ親しみやすくなる条件が家具絡みなので異常だ。

「ぎぎぎギギナさん、これには深い訳が‥」

あまりの衝撃でギギナは俺が腰を下ろしていた事までは気がまわらないらしい。


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