散文

□被験者の証言
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その端整な顔立ちからは想像も出来ない程残虐な性格の持ち主。
彼女はマッドサイエンティストだった。
僕は何故そんな恐ろしい彼女をあいしていたのだろう。
よくわからないけど、今考えてみると彼女の作った媚薬か何かの実験体にされたのかもしれないなあ。
呑気にそう考えていた。

僕は彼女をあいしている。
彼女の行なう目的の分からない血みどろの実験を恐れていても、それを平然と行なう彼女の事は全く恐ろしくなどなく、あいしているのである。
彼女は、自分をあいする男に無関心だった。
釣った魚に餌はやらない。
いつも無言で実験を行なう背中が、そう語っているような気がしていた。
でも僕は、あいされなくて悲しいとか、そういう感情はなかった。
本当なら、あいしてあいされ、尽くして尽くされるのが理想だと思っている。
だけど僕は、連れない態度の彼女がすきだったし、実験の邪魔はしたくなかったから悲しくなかった。
 
 
 

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