立海(幸攻)小説

□Chocolat
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「はい、赤也」

「幸村部長…ありがとうございます」



そう言って差し出されたのは

甘い匂いのするショコラ。



「落ち着いた?」

「…はい」

「びっくりしたよ、急に泣きながら電話してくるから」

「…ごめんなさい」

「あ、ごめんごめん。迷惑なんかじゃないからね」



そっと微笑んで、頭を撫でてくれる優しい手。

あぁ…うん、安心する。



「甘いものは得意じゃないけどさ、コレは飲むと落ち着くから」



透き通るような声。

透き通るような肌。

綺麗な瞳。



「で、どうしたの?進路の事?」

「…違うっス」

「じゃあ、テニスの事?」



確信を つく。



「今日たまたま部活に遊びに行ったんス…そしたら、部室でビデオ見てて…」



そこに映っていたのは、幸村部長だった。

中学生の頃から誰よりも強く、俺はまだ一度も勝てていない。

そのプレイは綺麗で でも強くて。



「それが去年の全国大会ので、丁度幸村部長のゲームで」



ずっと、好きだった。

中学生の頃からずっと想ってきた。

その想いが通じた今だって、ずっと。



「なんか、今の俺と同い年なのに、全然違くて」



その背中をずっと追ってきた。

いつも手を伸ばしてた。

その手は一度も届いた事が無い。



「すぐ会える距離に居て、いっぱい会ってんのに、いつまでも届かないんス」



そう言って俺は自分の目の前に向かって手を伸ばす。

俺の腕は空を切り、空しさだけが残った。



幸村部長はただ、黙っている。



「…でもやっぱり幸村部長に会ったら安心しました。手は届かないけど隣に居てくれるから」



俺はへへっと笑って幸村部長に寄りかかる。

…上手く笑えたかは分らないけど。



「俺もちゃんと手、伸ばしてるから。赤也だけに」



幸村部長は小さく笑って、俺の頭を撫でる。



「赤也の手が届くまで、俺も手を伸ばし続けるから」



あぁ・・・なんかもう、また泣きそうだ。



「届くまで、ずっと。届いたら、絶対離さないよ」



この言葉だけで、これからもこの人だけを見ていける。

幸村部長だけを、好きでいれる。



「だから、ずっと隣に居て欲しいな」



そう言って、幸村部長は俺を抱きしめて、キスをした。

…甘い な…


あぁ、そっか

俺は幸村部長の胸の中で考える。






俺のショコラは、部長なんだ



end.



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